何故、私はiTunesを利用しないのか?

正 直に白状すると私はiTunesを一度も利用したことがない。何故、利用しないのか?自分が聴きたい曲を売ってないからだ。さらに白状するとアイポーはお ろかmp3プレーヤーを一台も買ったことがない。外で音楽を聴く必要を感じないからだ。自分のサイトに自分の制作したmp3をおくレベルで音楽と関わって いる人間としては不思議な話だ。

私は別にネット上でmp3を買うことに抵抗があるわけではない。むしろ熱心な支持者だった時期もある。例 えば2000年頃キューバのフルート奏者マラカの演奏を聴いて非常に面白いと思った私はトニー・マルティネスというやはりキューバ出身のサックス奏者のア ルバムを買おうとした。

TONY MARTINEZ: MAFEREFUN (BLUE JACKEL)

具体的に言え ば上の1999年のアルバムを買おうとしたのだが、どのようなルートを通しても入手できなかった。元々キューバ/サルサにそれほど興味がなかったから適切 なルートを知らなかったのかも知れない。ネット通販で探し回っているうちにビタミニック(www.vitaminic.co.uk)というサイトでアルバ ムがmp3で販売されているのを発見した。とにかく曲を聴きたかった私はクレジット・カードを使いmp3を買った。2000年の終わりくらいだっただろう か?これが自分にとってはじめて買ったmp3だった。1曲ダウンロードするのに30分かかったように思う。大変な作業だったが、ともかくトニー・マルティ ネスという人の音楽を聴くことができた、これは素晴らしいと当時は思ったものだ。

その後、ホンジュラスのガリフナ族の演奏するプンタという音楽に興味を持ちカラバッシュ・ミュージック(www.calabashmusic.com)というワールド音楽サイトから30数曲まとめ買いをした。このmp3は今でも時々聴いている。

Web2.0、 ロング・テイル、iTunes、こうした新しい概念とサービスが出てきた時、私は大いに期待したが結論を先に言えば全く自分には無縁であるという悲しい現 実を知らされただけだった。何故かというと音楽におけるロング・テイルの部分にコンゴ、アンゴラ、ハイチの音楽が含まれてないからだ。はっきり言ってしま えばペイしない音楽として切り捨てられた訳だ。だがネット上の様々なCD通販サイトを使うとCDを買うことはできる。変な話である。

どこ が一体ロング・テイルなのだろうか?古い形態であるCDで買うことが可能だが在庫をかかえなくてすむ新しい形態であるmp3では買えないのだ。 iTunesの出現によりロックやジャズの希少盤と呼ばれるものが入手しやすくなった、これは事実だろう。だが露骨に言えば「売れる音楽」としてすでに確 立されたものに関してだけ豊富な選択が与えられ、「売れない音楽」は最初から無視されるようになったように見える。そしてビタミニックはつぶれ、カラバッ シュは現在サイト更新が止まっている(2008年12月28日時点)。

ネットが変化しているのは確かだが、それがむしろ多様性を殺しているなら進化ではなく退化と呼ぶべきだろう。