音楽的三葉虫

これを書いてるのは2009年1月2日だが数ヶ月前にプロデューサーの小室哲哉さんが詐欺で逮捕され大変な騒ぎになった。

ネッ トで記事を読んだ私は「えっ、あの小室さんがそんなハレンチな事を」と呟いたが、その自分の言葉が虚ろに響き何ら実感をともなっていないことに気がつい た。何故だろう、小室哲哉と言えばTMネットワーク、グローブ、そして華原朋美を手がけた有名プロデューサーではないか?何故だ?じっくり考えるうちに私 は小室さんの曲をひとつも思い出せないことに気がついた。さらに考えてみると、彼がやってる音楽がフォークなのかロックなのかJポップなのかテクノなの か、それすらわからないのだった。

私はコンゴ音楽ファンだから別に日本のポップスを知らなくても良い。だが、これだけ日本中で話題になっ てるのだから一度、聞いてみようと考えYouTubeにアクセスし幾つかのビデオを見た。小室さんの代表曲と言われるものらしいのだが驚いたことに1曲も 聴いた覚えがない。小室さんが活躍されたのは1980年代末から90年代後期らしいのだが、この間私は日本にいなかったかというとちゃんと日本にいて地べ たを這いずり回っていた。いや、Jポップも聴いてたのだ。椎名林檎、スーパー・バター・ドッグとか名前と音楽がすぐに出てくる人たちもちゃんといる。

結局、人は自分が聴きたいものだけを聴くのだろう。馬を水辺に連れていくことはできるが水を飲ませることはできない、同様にTV、ラジオ、商店街ありとあらゆるメディアや場所で音楽がかかっていても自分の興味をひかないものは通り過ぎていくだけなのだ。

ということは、このサイトで私がコンゴやアンゴラ、ハイチの音楽の素晴らしさをいくら説いても99.999%の日本人の注意を引くことなく忘れさられていくのだろう、ちょうど私が小室さんの音楽を全て忘れ去ったように。

私は自分が音楽的シーラカンスどころか三葉虫になったような気がしたのだった。ところで椎名林檎さんの2008年ライブ・アルバム、特にストリングス・アレンジが素晴らしかった、これをハッキリ記憶しているのは何故だろうか?

やはり人は自分が聴きたいものしか聴こえてこないのだろう。