読書週間に思うこと

私は本屋の広告担当者と話をしていた。本屋と言っても雑居ビルの1階に入ってるような小さなものではなく全国規模の書店である。この人は時々、私を試すような質問をした。やはり書店の人としては相手がどの程度の読書家であるか気になるようだった。

「今、 秋の読書週間ですよね。どうして秋に読書週間なのかわかります?」、彼は唐突に私に問いかけた。正直、前日に買ったコンゴ音楽のアルバムのことで頭がいっ ぱいだった私はうろたえ「そ、それは」と口ごもった。「一年には四季がある、その中で何故秋に読書週間があるんでしょう?」、彼はさらにたたみかけるよう に質問を繰り返した。

「秋は気候が良いし本を読む気にならないからでは?」と私はとりあえず思いついた事を口に出した。すると相手は驚き の表情を浮かべた。「その通りなんですよ。秋は旅とかスポーツとかする事がいくらでもある。本を読む人が減るんです。その売り上げ減を補うために秋に読書 週間があるんです」と彼は言った。私の適当な答えがずばり当たっていたのだ。

「しかし、良くご存知ですね。読書週間の由来を知ってる人はほとんどいませんよ」と彼は私の「博識」を賞賛した。まさか口からデタラメを言ったら偶然、正解だったと白状することもできず私はモゴモゴと意味不明な返事をしたのだった。

この事件をきっかけに私のなかで「読書の法則」が作られた。逆転の発想であり裏読みでもある・・・ 例えば最近、私の家の近所の日当たりの悪い窪地にアパートが建てられた。そのアパートの名前がメゾンひまわりである事を知った時、「ああ例の法則だ」と思う。

「読 書の法則」が最も成功した例としてデザイン・ジーンズを上げることができる。一方に有名ファッション・デザイナーによる1本数万円以上のデザイナー・ジー ンズがある。他方、そもそも衣服なのだからどんなものでも何らかのデザインは当然ある。ここで頭の働く誰かが「読書の法則」を適用しデザイン・ジーンズと いう言葉を生み出した。とりたててデザインの無いジーンズをあえてデザイン・ジーンズと呼ぶ、この表現は全く嘘がないという点において非常に優れている。

「読書の法則」は増え続けているようだが、未だにそれが良いことなのか悪いことなのか判断できない。

注: 私が上に書いたとおりの話を聞いたのは事実だが、読書週間の由来に関しては正しいかどうか保証しない。人は勘違いをするものだ。