ファション・ブランドを考察する

意外に思われるかも知れないが私はファッションにうるさい。今は全身をユニクロというブランドで統一している。そこのあなた、笑ってはいけない。私にはユニクロを選ぶ理由があるのだ。それはサイズである。

私 は身長はそれほどでも無いのだが、胸囲や腕周りが非常に厚い。初めてあった日本人は「拓殖大学空手部の出身ですか」とよく聞く。これは声がつぶれているこ とも理由のようだ。柔道とかやると喉輪により声帯を痛め、声がつぶれるからだ。私は「いや、そのような名門は出ていません」と答えることにしている。初め て会うアメリカ人は「空手を教えてくれ」とよく頼む。私は「いやいや、私は平和を愛する知識人であり空手のような芸は持ち合わせていない」と答える。昔は 本当に着る物が無かった。しかたないからフリー・サイズと呼ばれるものをよく買った。ところがユニクロ製品を買うようになって、そうした不便が無くなっ た。TシャツならXXL、ジーンズなら在庫のある一番大きいサイズを選んで買えばほぼ間違いないからだ。実際にはXXLでも窮屈と書くと状況が理解してい ただけるだろうか?

こうした不幸な体型は時としておかしな事件を引き起こす。警察に何かの相談にいってヤクザが出頭してきたと勘違いされたこともあった。そうした事件の1つに下のものがある。

あ る日、私は電車のなかでブラジル・ポルトガル語の文法書を広げ、動詞の格変化を一生懸命暗記しようとしていた。ある駅についた時、何人かの学生が入ってき た。一人のいかにも体育会系の男は、電車のソファーにデーンと座り、足を前に思い切り投げ出した。その音をうるさいと思った私は文法書から顔を上げ、男を 見た。そうすると男は急に姿勢を改め、足をひっこめ、ソファーの上にかしこまったのだ。

あれれ、この人どうしたのだろう? 私は不思議に 思い彼を観察したのだが、やがて気がついた。彼は私が文法書から顔をあげて見たのをガンをつけたと勘違いしたのだ。実際、サラリーマンの頃もよく言われた のだが電車の中でブラジル・ポルトガル語の勉強をしている時の私は相当に恐く見えるらしい。これは何故かというとブラジル・ポルトガル語には助動詞が少な く動詞が様々な格変化をすることで未来形や過去形などを表現しているからだ。つまり膨大な格変化を覚えないとブラジル・ポ語はマスターできないのだ。全て ブラジル・ポルトガル語の責任である(ということにしておこう)。

このように日本で暮らしている限り、体格で良い思いをしたことが無いの だが海外では違う。コンゴの首都キンシャサの夜3時、一人で歩き回るという無謀なことが可能だったのもこの体型のおかげだ。もっとも当時のキンシャサはア フリカ有数の安全な都市だった。マラリアなどの寄生虫を持つ蚊が飛び回っており、当時は蚊に刺されることでエイズが移ると主張する医学者がいた事もあり、 あまり気分が良い物ではなかったが。

という訳で私がユニクロにこだわる理由がご理解いただけただろうか?昔、作家の椎名誠さんに仕事で会ったことがあるが、身長とか体型がほとんど同じだったのを思い出す。椎名さんも自分のクローンを見るような不思議な表情で私を見たのだった。