ブラジルの中のアメリカ

あ る程度、ブラジル社会や文化に慣れ親しんだ人ならわかると思うが、ブラジルの上層階級/知識人は親米とまではいかないまでもアメリカ文化をよく研究し身に つけている。私はこれをずっと不思議に思ってきた。ブラジルはやろうと思えば自給自足できる国であり、アメリカ文化を積極的に取り入れる理由が無いのだ。 逆に不思議なのは日本で、軍事面でアメリカに大きく依存していながら、つまり生殺与奪権をアメリカに握られていながら、日本人は英語を勉強しようとしな い。日本人には自殺願望があるのだろうか?

リオの街角を歩いていてタクシーを拾おうとしていたら丁度、タクシーが目の前で止まりタクシー から出たスーツ姿の女性が高層ビルに向かった。私は運転手に話しかけ、**まで行ってくれと頼んだのだが、運転手は取り合おうとしない。スーツ姿の女性が 私達のやりとりに気付いて。何か声をかけた。それは早いブラジル・ポルトガル語だったので聞き取れず、私は"Fale no Engles, por favor!"(英語で話してもらえませんか)というと彼女は私が日系ブラジル人ではないことに気がついたらしく、「そのタクシーは一日貸し切りだ。今は 待ってる状態だからオマエが頼んでも無駄だ」と彼女は英語で説明した。私は即座に理解し"Muinto Obrigado"と礼を述べた。何を言いたいのかというとブラジル人は非常に英語がうまい人と全然、できない人に二極化してるということなのだ。


こ の関連で思い出すのはアメリカーナと呼ばれるブラジル国内都市だ。この都市の起源はアメリカ南北戦争にまで遡る。負けた南軍の一部が、米国籍を放棄しブラ ジルに移住したのだ。当時のブラジルでは奴隷制は堅持されていた。はっきり書いてしまえば世界で最後に奴隷制を廃止したのがブラジルなのだ。ブラジルに移 住したアメリカ人はアメリカーナという新しい都市を作り、この都市の周辺では英語で全ての生活の要件が足りたという。つまりブラジルという国は、どちらか というと反米的な国と見られているが、自国の中に「アメリカの一部」が存在するのだ。それがボサノバやジャズサンバという音楽にも強く影響していると私に は思える。

そしてアメリカ系ブラジル人は、ブラジルの政界や財界でそれなりの存在感を持っている。他方、はるかに多くの移民を送り込んだ 日本からの日系移民は、数に相応しい発言力を持っていない。これは何故なんだろう、私は時々考える。確かにブラジル社会そのものが白人優先の考えが強い が、ブラジルに多くいるアラブ系はきちんと影響力を保っている。

一体、誰が判断の間違いをしたのだろうか?