遅れてきた夏 のサンバ

今日は2009年7月11日、夏ははじまったばかりだ。

あ れは2003年頃だっただろうか、私はあるネット上での実験をやろうと考えていた。それは何かというと「遅れてきた夏のサンバ」という曲を作りその曲のイ メージに合う小説を毎日、連載の形でネット上の自分のサイトにあげると言うものだった。作曲その他は全て私で、小説を書くのも私という、実に家内制手工業 の世界なのだが、小説の展開にあわせ音楽のアレンジを変え様々な変奏を作りだし、音楽と小説の融合を図る世界最初の試みになる予定だった。

だ が、この頃からコンゴの内戦が激しくなりコンゴ音楽ファンである私は日々、気力を失っていき、曲と小説の大まかなプロットができた頃にはすでに日経平均が 1万円を回復していた。バブル崩壊後の退廃をけだるく歌いあげるというこのプロジェクトは時代遅れになってしまっていたのだ。

「遅れてきた夏のサンバ」という 曲はすでに完成させており捨てるのももったいないのでmF247という2ch管理人ヒロユキ(当時)が落札した今は存在しない音楽配信サイトで一時期、流したりした。 その後、アレンジを変えたために完全なバージョンは現在、存在しないが一部だけ下にアップしてみた。

遅れてきた夏のサンバ

こ の小説はどういうプロットだったかというと、昔の女同級生の父親の葬式に出るために久しぶりに田舎に帰った私は、バブル崩壊の爪痕が残る地元をうろついてい た。その内に、ある作りかけの状態で放置されたリゾート・ホテルの前まできた。その時、ホテルの中で何か物音がした。そのホテルはハゲタカ外資系資本(恐 らくGSかモルスタを想定していたと思う)に買収され、鎖で封鎖されていたが、誰かが中にいるようだった。

興味を持った私は、柵を乗り越 えホテルの中に入っていった。ホテルの奥にひそんでいたのは驚いた事に、昨日、葬式が行われた本人だった。その人はガソリン・スタンドを経営していたの だが、海が荒れた日に釣りに出かけ死んだはずだった。だが何らかの保険金詐欺が行われたようで、死んだはずの本人は荒れ果てたホテルの奥に隠れていた。

簡単に言えば保険金詐欺をバブル後の退廃と音楽と海と恋で演出するという小説だった。こちらの小説は残念ながら、残っているのはプロットだけで小説自体は 一行も残っていない。

今、 考えると良くもこんな馬鹿な試みをやろうとしたものだと思うが、2003年頃には時代にふさわしい行為に思えたのだ。時代の空気に合った勢いが無くなっ た今では、もはや完成させる気力も無くなったのは残念な話だ、何故ならこの曲「遅れてきた夏のサンバ」は日本音楽史上に残る名曲になる予定だったから だ。少なくとも私はそう評価していたのだが、現実には誰も誉めてくれる人はいなかった。いや、一人だけmF247で聞きました、携帯の着メロに使わさせて もらってますというメールを送ってくれた人がいた。一人でも価値を認めてくれたのだから良しとしよう。