世界旅行者の心得 パート2

北斗の拳における矛盾 -
本当に極限におかれないと真実はわからない

今じゃあケツをふく紙にもなりゃしねってのによぉ! という漫画「北斗の拳」第1話での有名なセリフがある。これは無法地帯とかした未来において貨幣経済が消滅した状態でのお札に関する意見である。今回は、このセリフが本当かどうかを検討してみよう。

パー ト1で書いたように、私はキンシャサの水道の水を数日飲んだ。事件はある日、キンシャサで一番大きな繁華街を歩いている時におきた。猛烈にお腹が痛み、腸 がゆるくなったのだ。だがキンシャサに無料の公衆トイレなどある訳が無い。それを言うなら有料も無かったが。普通の商店街ならお店のトイレを借りることも できるのだが、そうしたものは見あたらなかった。しかし、事は急を要した。私は目の前にある宝石店に入り「すまない、トイレを貸してくれ」と頼み込んだ。 脂汗を流した私の必死な表情をくんでくれたのか、お店の人は店の裏にあるトイレまで導いてくれた。

このトイレで出すものを全て出し切った 私はケツをふき外に出ようとしたが、そのトイレ(昔の日本の野つぼみたいなもの)にはトイレット・ペーパーが置いてなかった。私は全く手ぶらで歩いていた ためにティッシュなども持ち合わせていなかった。だがケツを拭かずに出ると日本の名誉に関わるではないか!

困った私は、とうとう財布から 現地紙幣数枚を取り出し用をすました。トイレから出た私は宝石店店員に礼を何度か言い、タクシーをひろいホテルに帰った。本当の問題はここからおきた。ホ テルに戻って数時間もすると高熱が出て、恐ろしいほどの脱水症状に襲われた。何故か?これは旅慣れた人はよくご存知だと思うが、途上国の紙幣にはありとあ らゆる細菌と毒物がしみこんでおり、そうした紙幣をトイレット・ペーパー代わりに使うとケツの穴から細菌と毒物が入り込み、数時間も経たないうちに感染症 状がおきるからだ。

さて、ここで最初の北斗の拳第1話のセリフを見てみよう。

今じゃあケツをふく紙にもなりゃしねってのによぉ!

こ れは貨幣価値が失われた無法状態ではお札は(恐らく小さすぎて)トイレット・ペーパーにすらならないと言いたいのだろう。だが、お札に何らかの価値がある 状態なら当然、そんな馬鹿な事はしない。野グソをすればいいからだ。全く、お札の価値が失われた状態では恐らく、お札は煮炊きの材料として使われるだろ う。問題は中途半端に価値が残っている時である。そうした状態では人々はお札を粗末に扱い、結果として上に書いたように細菌と毒物がしみこんでしまい、ケ ツをふく紙には全くならないのだ。何故なら、お札でケツを拭くことで下手をすると死ぬかもしれないからだ。

私はキンシャサで実際に現地紙幣でケツをぬぐい、結果として数日寝込むことになった。そうした体力が弱った状態でマラリア蚊に刺されたら簡単にマラリアに感染する。つまりお札の価値が失われた北斗の拳のような世界では、誰もお札でケツをふくような自殺行為はしないと思う。

信じられないかも知れないが、これが真実である。北斗の拳自体は昔、私も楽しんで読んだ。ケチをつけるつもりは毛頭無い。だが世界はまだまだ広いのだ。