鳩山英語の評価

鳩 山総理の国連での演説を聴いた。予想以上にうまかった。少なくとも私より数倍発音がうまい。何故なら私はRとLの区別すらできないからだ。RとLの区別が できないというのはアメリカ人的には社会の下層民の象徴である。実際、初対面のアメリカ人に馬鹿にされたことは何度もある。彼らは高校時代、オーストラリ アに1年ホームステイしてましたというような「なんちゃって英語使い」を当初は評価する。だが、すぐに彼らはそうした「なんちゃって英語使い」の底の浅さ に絶望する。彼らは発音が(私よりは良く)日常会話の受け答えが上手なだけであり、難しい議論は一切できないからだ。

そういえば、ある事 件があった。前のエッセーで書いたキャッシー(金髪長身、モデルなみ美人、だが性格は素直な人)を囲んでみんなで話をしている時だ。彼女は金平糖は日本の お菓子なのかと聞いた。だが「なんちゃって英語使い」は誰も答えられなかった。誰も説明できないので仕方なく私が説明した。私は基本的に英会話が嫌いだか ら渋々だが。

金平糖というのはポルトガル語のconfeitoがなまったものであり、元々は外国のお菓子であると私が説明すると彼女は confeitoはどういう意味なのかと聞き返した。それは英語のconfectionary(お菓子を意味する難しい英語)とほぼ同じ意味だと説明す ると彼女は納得し、「どうしてオマエは金平糖の語源を理解しているのか」と聞いた。そこで私がラテン系言語を英語とほぼ同じ比率で勉強しており、英国がか つてフランスの植民地になった時に多くのラテン系単語が英語に入り込んだことを説明すると彼女は「オマエは何故、アカデミックな職業に就かないのか?」と 訊いた。そこから先はどう答えたか記憶に無い。

大体、アメリカ人がそうした「なんちゃって英語使い」を評価しているかというと正反対で、 あるアメリカ人と二人で話してる時にそうした「なんちゃって英語使い」(女性)とのセックスの話を始め「あいつは肉便器だよ」(easy lay)とハッキリ言い切った。つまり発音が良いだけの語彙が乏しく自分の主張ができない「なんちゃって英語使い」は実はアメリカ人にメチャ馬鹿にされて いるのだ。

鳩山演説にもどるのだが、日本のTVでの報道を見ていて私は呆れた。それは、正に北朝鮮の朝鮮労働党あるいは毛沢東の頃の中国 メディアの報道そのままだったからだ。だがWSJなどの欧米メディアを見て回ると鳩山イニシアチブなるものは無視されていた。それは鳩山由紀夫氏の英語演 説に何ら中身がないからだ。発音がうまいかどうかではないのだ、欧米メディアは何を主張したか、その主張は具体的な裏打ちがあるかを元に判断しているの だ。だが日本人の大部分は、鳩山さんはスゴイ、発音も良いし、独自の主張をしたと「異次元の評価」をしたのかもしれない。

昔、私は元アメ リカ大統領が出席する会議の資料翻訳をしたことがある。当然、敬語や丁寧語をふくめ恐ろしく難しく時間のかかる作業だった。この時に私が書いた英文をプ ルーフ・リーディングしてくれたアメリカ人は何人かいた。その内の一人、ロバート(ハーバード大学卒国際経済学専攻)は「竹本さんは後、1年勉強すればア メリカ人をこえる英語の読み書きができる」と言ってくれた。お世辞であるにせよ、私自身も大卒アメリカ人が語彙も乏しければ、広範な知識も無いことに呆れ ていた時期だったので、それほどロバート・プラ*****の発言に違和感を覚えなかった。当時は、それくらい読み書きに関して自信を持っていたからだ。

私 が「OK、オレはこれからハーバード用の博士論文(doctor's dissertation)を書くからオマエが校正してくれ」と冗談を言うとロバートは「喜んで」と答えた。だがdissertationという単語はあ まりに難しかったらしく、周囲の日本人「なんちゃって英語使い」はdissertationとは何かとロバートに聞いた。ロバートも説明にするのに四苦八 苦だったのを想い出す。

このサイトで書いてる日本語エッセーもそうだが私は意味が伝わることを最優先している。そのため文章が冗長 (redundant)になる。要するに「馬から落馬した」的な表現が多いわけだ。だが、私の目的は美文を書くことではなく誤りのない情報伝達にある以 上、「馬から落馬」というのはむしろ必要な表現(必要悪)だと考えている。情報科学を勉強した人にはECMと言えばわかるかもしれない。だが、そうした 「馬から落馬」という日本語表現を日本語技能の不足と考える人もいる訳で・・・・・・・ 以下、無限ループなので止めよう。