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トロピカル通信、BMRと日暮泰文さん
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年代にトロピカル通信というワールド音楽系同人誌があった。関西在住のディープな音楽ファンが集まって自分たちで記事を書き、印刷・製本し、東京を始め多
くのレコード店で販売された。定価100円の割には内容が非常に充実していた。何故かというとコンゴ音楽とかハイチ音楽までマイナーな音楽になると音楽
ファンが同時に評論家でもあったからだ。この雑誌が可能だったのはH氏という印刷会社勤務の人が中心スタッフにいたからだ。
編集長は確
か、キューバ音楽ファンで、H氏も元々そうだった。だが、H氏はコンゴ音楽のほうが面白いと思ったらしく、雑誌の内容がどんどんコンゴ音楽とかハイチ音楽
中心になっていった。これは編集長他、伝統的な音楽ファンには不愉快だったらしい。結局、意見がまとまらずトロピカル通信はつぶれてしまった。その頃、H
氏と話をしたらトロピカル通信は大赤字だったという。その2年後に別のレコード店で会った時には「もうコンゴ音楽に興味ない。キューバ音楽のほうがいい」
という残念な発言を聞いた。
同じような動きはBMR(ブラック・ミュージック・レビュー)でもおきた。元々、世界的なブルース研究家であ
る日暮泰文さんが発行人となりThe
Bluesという、名前のとおりブルース中心の雑誌があった。だが日暮さんが新しい傾向の黒人音楽、特にハイチ音楽のファンとなったためにBMRと名称を
変更して、内容もコンゴ音楽とかハイチ音楽、ソカ(モダンなカリプソ)中心になった。日暮さんはハイチ音楽に惚れ込んだあまり、ハイチ音楽のLPを輸入し
日本で配給を始めたくらいだ。ところがBMRでもやはり意見の対立がおき、従来のブルース・ファンは、別の雑誌でその手の音楽をやれと苦情を言い出した。
一方で日暮さんの熱意にもかかわらず日本でハイチ音楽は根付くことなくBMR/Pヴァインのお荷物となったようだ。その後、バブル崩壊後の景気悪化もあ
り、BMRは再びアメリカ黒人音楽中心に路線を変えた。これはこれで現実的な対応だったが、Jポップの比率が増えるなど我々コンゴ音楽ファンは相当に失望
した。結局のところワールド音楽でもディープな傾向の強いコンゴ音楽とかハイチ音楽が本当に流行ったのはバブル期前10年くらいの間だった。いろんな人が
普及に努力したのだが。
その後、90年代にパリに行った時にフナック(フランス国営巨大本屋/レコード店)などを見て回ったが、ブルー
ス・コーナーにはPヴァインのアルバムを日本から輸入したものが相当数おかれていた。それもかなり高い値段で売られていた。値段が高かろうが日本でしか出
回ってない以上、買うファン層がちゃんと欧州にいたからだ。
日暮さんは2006年に事業を譲渡し、引退されたのだが、そのコラムは下で読める。 http://www.sogotosho.daimokuroku.com/?index=kokou
残
念ながら昔、ハイチ音楽を自社で配給するまでのめりこんだ事は書かれていない。だが日暮泰文さんのように数十年に渡り黒人音楽の普及につくした人の業績を
政府がきちんと認めてもいいのではないかと私は思う。実際、日本の(あるいは世界の)ブルース・シーンに多大の貢献をしたのだから。シャンソンとかタンゴ
とかはマイナーなのに政府は評価し顕彰しているのに何故、ブルースは評価しないのだろうか?ご本人がそんなものは要らないと言われているのだろうか?不思
議な話だ。
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