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ファチマという名前の女性
私
の好きなブラジル人女性歌手にファチマ・ゲジス(Fatima
Guedez)という人がいる。ブラジルのユーミンと言う人もいるが80年代ブラジル音楽不毛期に魅力的な曲を書き歌った。"Cheiro de
Mato" とか"Fraqueza"という曲が良かった(ファチマというのはブラジル発音でポルトガル語発音だとファティマになる)。
あ
る日本-ブラジル友好交流団体の人と話をしている時に偶然に彼女の話題になった。私は「彼女はアラブ系でしょ?名前もアラブ的だし」と言った。LPジャ
ケットで見る限り、肌の色がヨーロッパ系にしては浅黒かったしブラジルには実際アラブ系が多いから別におかしな発言ではない。ところが相手の人、Tさんは
「違いますよ。ファチマというのはポルトガルですごくありふれた名前です」と怒って反論した。彼女は私のことを人種差別主義者と思ったようだ。
私
が皮膚の色にこだわるなら80年代にコンゴに行き、同じものを食べ同じ水を飲み、朝の5時まで一緒にコンサートを楽しむ訳がない。だがTさんは実際に何回
もブラジルに行き、現地でファチマという名前の女性と何回も会ったのだろう。つまり私がファチマの肌の色が浅黒いからアラブ系だろうと推測したことを彼女
は自分の実体験に照らし人種偏見と見なした訳だ。正直、私はTさんを「ヒステリー女」と内心、嫌った。
実はイスラム教預言者ムハメッドの最愛の娘がファチマ(Fatima Zahla)だった。彼女は三人の子供を産んだ:
Al Hasan Al Hussein Al Muhsin
こ
の内フセインはイラクを統治したとあるから当然「あのフセイン」だろう。ともかくファチマというのはイスラムの女性の模範として考えられた。11世紀頃、
ポルトガルはベルベル/アラブの支配下に入ったから、その時にファチマという名前もポルトガル語の一部となったと推測する。
つまり私はきちんと歴史をふまえた上でファチマ・ゲジスはアラブ系だろうと主張した。対してTさんは、自分のブラジルでの実体験から肌の色でアラブ系と見なすことは人種差別主義者の証拠と思い、怒った。
では、どちらが正しいのかと思いあらためて英語wikiを参照してみた。日本語wikiはディープな話題に関してあてに成らないからだ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Fatima_(name)
そ
うするとファチマというのはアラブ起源の名前とハッキリ書いてあり、ファチマという名前の著名人のところにFatima
Guedez(ブラジル人女性歌手)もちゃんと出てくる。実際、彼女がアラブ系かどうかは不明だが、ファチマという名前からアラブ系だろうと私が推測した
ことには十分に根拠があった。しかもwikiの記述を信じるならファチマがポルトガル系の女性の名前として広まったのは20世紀以降とあるから、ますます
私の主張のほうが正しかった訳だ。ところで台湾の総統、馬英九がイスラム系であることはずっと前から知っていたが、上のwikiの記述を読むと馬(ma)
の語源はFatimaであるという説も紹介されている。世界はなかなか複雑である。
という訳でTさんに悪意は無かったと思うが、ファチマ
という名前を持つブラジル人女性をアラブ系だろうと見なすことは失礼でも何でもなく、きちんと根拠のあることなのだが、彼女には彼女なりのブラジル現地で
の体験があり、私の発言に我慢できない部分があったのかなと今では思うのだった。
私は自分のことを地球市民と呼んでいるのだが、Tさんのような別のタイプの「地球市民」の度量の狭さにうんざりしているのも確かだ。
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