ブラジルで医者にかかる

海外滞在者が良く外国で医者にかかるのは大変だという話を書いている。そこで私も自分の体験談を書いてみることにした。

ブ ラジル旅行は1ヶ月以上の長い旅だったために、途中で持参していた薬が切れた。無いとすぐに困るという薬ではないがブラジルで医者にかかるのも面白いと思 い、あえてリオ市内にある医院に行った。受付で英語で説明すると看護婦はすぐに先生に会わせてくれた。挨拶程度はブラジル・ポルトガル語でするのだが、と ても症状を説明するような語学力は無く、英語を使わざるをえなかった。

医師は長身の白人で「どうしたんですか?」と聞くので、「これこれ で常備薬が長旅で切れた。サンプルはこれなんだけど、これを2週間分出して欲しい」というと医師は、私が差し出した薬のサンプルを見て「その薬ならウチに 置いてます」と言った。ところがブラジルの医師法がどうたらですぐに薬を出すわけにはいかない、初診者として1から説明を受けた上でなら薬を出すことも可 能だという。という訳で私と医師はほぼ30分くらい会話をしたのだが、この医師は英語が上手で冗談を言いながら診断は終わってしまった。

と ころで、この医師のデスクには人間の頭蓋骨が置かれていた。おかしな趣味の医師だなと思った私は「あの頭蓋骨は本物か?」と聞くと本物だという。日本の法 律だと、それは違法だぞと私が言うと「ブラジルの法律でも違法だよ」と言い、明るく笑った。そこで医師とうちとけた。あるいは、そうした話題作りのために わざと置いてるのかも知れない。

医師は「ところでキミに頼みがあるんだが」と言った。それは何かというと「私は柔道の黒帯で、日本から免 状を送ってきたのだが、日本語がわからない。キミが読んで説明してくれ」というものだった。医師が書類棚から出してきたのは確かに柔道の黒帯の免状だっ た。私が読み上げて意味を解説すると医師は「ありがとう、やっと本物の免状と確認できたよ」と言った。冗談だと思うが、好感の持てる人だった。支払いは確 か日本円で1万円くらいだった。日本で初診料込みで医者にかかったら4−5千円くらいの時代だったが、日本は保険を使用しての料金なのに対してリオでは全 額支払って1万円だから意外と安いと思ったものだ。

ブラジルにグレーシー柔道なる独自の柔道があるのを知ったのはそれから数年後だった。上に書いた医師は講道館だったが。

と ころでブラジルには一人、知人がいた。それは音楽の関係の知り合いで、ナーミ・メネセロカセビというアラブ系ブラジル人だった。サン・パウロの彼の家に電 話すると、私のことを何か勘違いしたらしく「ああ、東京でカポエイラをやってる人」と言った。うーむ、私はそんな高度な芸は持ち合わせていないのだが、 ナーミの中では格闘技系の人として記憶されていたのだった。理由は全く不明だが(笑)。

このナーミ・メネセロカセビは小野リサさんの初期のコンサートでドラムスを叩いていたから覚えている人もいるかも知れない。