殿様商売の行き着く先

私 が新聞社の広告営業になった頃は電通、博報堂、大広というのが広告業界の序列だった。ところで当時は朝日新聞社の系列広告会社トップは大広だった。朝日広 告社より大広のほうが朝日からの出資比率が高かった。この大広の社長はずっと朝日新聞編集局の利権だった。広告局出身者は格下であるために大広の社長にな れないのだ。

ところで、ある朝日編集から来た新しい社長が就任挨拶で「これまでの広告会社は利益追求できた。それではダメだ。これからは 社会正義を追求する」とのたまった。これは業界ではかなり有名な話なのでご存知のかたもあるかも知れない。しかし、広告業界というのは基本的に893と同 じで、ユスリ、たかり、脅しで成り立っている。2ch風に言えば、893がウンコだとすれば広告業界は金・銀・プラチナでコーティングしたウンコである。 見た目は華やかだが、中身は同じなのだ。そんな業界で3位につけていた大手である大広社長に就任した元朝日新聞記者は「利益ではなく社会正義を追求する」 と宣言したのだ。私より20歳ほど年上の大広営業マンから直接、「朝日さん、カンベンしてくださいよ」と言われた時、私はどう返事をしていいかわからな かった。朝日新聞記者というのはこれほど世間離れしていたという証明であり、当時の朝日新聞がいかに殿様商売をしていたかの証明でもある。

殿 様商売が可能なほど当時の朝日新聞はすさまじい利益を上げていた。私の記憶が正しければ従業員1万人以上の企業でトップの営業利益(ひょっとすると利益率 も)を誇っていた。それがどれだけスゴイかの具体例を挙げてみよう。当時の朝日は1万人の従業員全ての退職引当金を計上していた。これが何を意味していた かというと、明日に全社員が辞表を出しても即座に退職金を全額払えるだけのお金を内部留保していたのだ。今、振り返ってもありえない話のように思えるが 80年代後期の朝日の経営はそれほど良かったのだ。

当時の朝日系列TV局は最初はTBS、ねじれ現象を解消してからはTV朝日だったが、 そうしたTV局はただの系列子会社にすぎなかった。給料は当時でもTVのほうが良かったが誰も誘われてもTVに出向しようとしなかった。それほど下に見ら れていたのだ。ところが時代は大きく変わったようだ。

引用
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/139930

朝 日放送は10日、朝日新聞社の発行済み株式の2・31%に当たる7万4千株を、朝日新聞社の創業家である村山美知子社主から取得したと発表した。朝日放送 は第10位の大株主になる。朝日新聞社は朝日放送の筆頭株主で、今回の株式取得で両社は株式を相互保有する。メディア間の競争が激化する中、放送事業と新 聞事業の連携強化など、広範囲な事業提携を具体化させる方針だ。
 
引用終わり

引用

「テレビ朝日の社長に初めて生え抜きの早河洋社長(65)が6月25日の総会後の取締役会で就任する。同社は65年に就任した横田武夫社長(5代目)から君和田正夫社長(12代目)まで朝日新聞社の出身者が社長を務めてきた」

引用終わり

何というか、朝日新聞は系列TV局に救済してもらうまでに落ちぶれたのだ。栄華必衰、会者定離、まさに無常である。ナンマイダブ、ナンマイダブ・・・・

し かし考えてみればこれは当然の話でもある。新聞社は多数の既得権益を持つとは言え、新聞という印刷物を家庭に宅配するという実業なのだ。対してTV局は新 聞で言えば記事にあたる番組すら外注するほど割り切っており、コンテンツ制作配信費用が極端に安いのだ。すでに安い電波使用料を民主党がさらに下げてくれると いう約束まである。一応は実業である新聞が完全な虚業であるTVに負けるのは当然の話かも知れない。こうした背景を見ると、現在おきているTV局暴走の理 由も見えてきそうだ。かつては新聞社のシッポでしかなかったTVに胴体である新聞が振り回されているのだ。

しかし実業が虚業に負けるというのも哀しい話だ・・・・