松本清張と不愉快な上司たち

引用

http://www.asahi.com/national/update/0114/TKY201001140223_01.html

元 幹部は、04年10月に本体工事の入札があった胆沢ダム工事の談合も差配。同工事を鹿島などの共同企業体から下請け受注した中堅ゼネコン関係者は特捜部 に、同月に「小沢氏側に5千万円の現金を渡した」と供述。「この金は、工事費に上乗せして元請けから補填(ほてん)された」と説明したという。特捜部は、 この5千万円を含むゼネコン資金と、陸山会が同月に購入した東京都世田谷区の土地の原資4億円の関連性を調べるため、捜索を行ったとみられている

引用終わり

私 が土建を担当していた頃の経験から言うと、いわゆる土木献金の本当の原資は税金である。何故かというと、大型工事の発注主が国だからだ。私の例だと中部地 建だった。ここが大型工事を発注する。その原資は何か?当然、国の予算=税金である。ただ私と非常に仲が悪かった土木大好きM部長によると「こうした業者 は受注額の1%はいろんな目的のために温存している。それを広告にひっぱるのが広告営業の仕事だ」そうだ。

まずJVのまとめ役企業があ る。それとは別の業界全体をまとめる土工協(日本土木工業協会)という組織もある。私が土建を担当してた頃は、熊谷組が土工協の幹事だった。今回の西松建 設や水谷建設を見ると、そうした温存する1%をお縄さんに上納したように見える。多くの人が勘違いしてるが、土建企業が自分のところの売り上げから裏金を 作り、献金をしているケースは少ないと私は考える。ほとんどは受注の先食いではないか? そして、それは明らかな税金の「無駄遣い」だ。刑事罰としては公 金横領か?だから、国民がもっと怒るべきなんだが。だが私も土木を担当するまで事情を知らなかったくらいだから一般国民のほとんどは知らないだろう。ここ らの考え方の違いで私とM部長は「天敵」と呼ばれるまでに疎遠になった。閑話休題。

過去に夏目漱石は朝日新聞社員として多くの小説を書い たという話をしたが、もう一人の朝日生え抜きの大作家がいたのを忘れていた。もちろん松本清張氏である。しかも、この人は朝日新聞西部本社広告部広告制作 室勤務だったので、私からすると直系の先輩にあたる。ただ朝日内部ではあまり評価されてなかったような気がする。ちょっと性格がアレだったのだ。

面 白いエピソードを思い出したので書いてみよう。清張氏は西部本社広告制作室では、かなりの「トラブル・メーカー」だったらしい。特に自分の文才を認めよう としない広告上司と何回もぶつかったという。広告制作室は記事のようなものも書くし、自社制作の広告のデザインも手がける。清張氏にしてみれば「オレの才 能は書いてる文章を読めばわかる」という思いがあったようだ。だが、広告で必要とされている文章は文学性とか国語力とか、一切関係ないものばかりだ。広告 で、そんな苦情を言っても評価される訳がない。清張氏は編集への配属を希望したのかも知れない。それは前例がないことは無いが希であり、ほとんどの場合、 編集が勝手に広告局員に目をつけ、編集局に配属した。広告が依頼しても何ら効果ないのだ。

その後、清張氏は会社を辞め小説家として売れっ 子になる。70年代末くらいに西部本社で松本清張氏を呼んでの講演会が開催された。これは西部本社広告部主催だった。この講演会には、昔の清張氏を知る上 司達がたくさん来ていた。清張氏は最初は普通に喋っていたのだが、途中から会場に来ている広告部上司達の名前を挙げて、彼らがいかに無能であるかをこき下 ろし始めた。青くなったのは、この講演会を企画担当した広告営業である。まさか講演を止めるわけにもいかず、どうしようかと頭を抱えたという。

これは西部本社広告部から名古屋本社広告部(当時)に飛ばされるという非常に珍しい人事があった時に、「体験者」から直接、聞いたので恐らく本当の話だと思う。