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カバード・コール/プットへの不満
カバード・
コールもプットも考え方は同じなので、ここでは
カバード・コールだけを考える。多くのオプション入門書では誤解を招く書き方をしているが、この手法は基本的にCall売りを先物でデルタ・ヘッジをする
ことでその他のギリシャ文字、特にベガとθから利益をえようとするものだ。
ATMのCallのΔはほぼ0.5だからCallを売ると同時
に先物ミニを5枚買えば、Δ中立になる。それが意味するところは小動きである限り、毎日θ分のお金をもらえるということだ。しかし世の中、そんなにうまい
話がある訳がなく当然ながらこの手法の欠点がある。 最大の欠点はγが敵になっているという点だ。
わ
かりやすく書くと、Callを売って
300円得たとして、そのポジが生み出す最大利益は30万円である(オプションは1000倍のレバがかかっている)。一方で先物ミニ5枚買いが生み出す損
は無限大だ。例えば800円下がったと仮定しよう。この時、先物ミニ5枚買いが生む損は40万円である。これはすでにCall売りの最大利益30万
円をこえている。さらに不味い事に、暴落時には一般的にオプション価格が上がる傾向がある(IVの上昇)。その為に下手すると300円で売ったCallは
まだ120円程度の値を保っているかも知れない。その場合、40-18=32万円の損が出る。もちろんヘッジである先物ミニ買いをとりあえず返済し
Call売りを放置することも可能だ。その場合、10万の損ですむ。だがヘッジ無しで放置することは不必要なリスクを取っていることになる。また800円も下がれば証拠金も上がるからポジを維持できないかも知れない。
Call
売りのγをヘッジしてないから、そうした損が出る。ではγをヘッジするとどうなるか?まずOTMのCall買いでヘッジした場合、全体の売り金額が減る。
γヘッジ用に買ったCallの値段が30円でΔが0.1と仮定すると、最大利益は270円に減る。一方で先物ミニ買いは4枚ですむ。この場合、800円の
暴落で先物で32万円の損が出る。Callは放置すると仮定すると全体で5万円の損となる。つまり損が減る。暴騰した場合、買っているCallがどの程度値上が
りする、つまりヘッジとして機能するか不明だが、Call売りは「先物1枚売り」になるから最大ミニ5枚分の損が出ると思われる。いずれにせよポジが複雑
になる。γヘッジをすることで最大利益が減り、最大損失も減り、ポジは複雑になるのだ。さらに不確実要素も増える。
私がカバード・コールに関して持つ不満は「何故、カレンダーを使用しないのか?」である。
期
近の売りが30万、期先の買いが40万として最大損失は10万である。これはカバード・コールの最大損失と大差ない。しかもダイナミック・ヘッジが不要
だ。いったんポジを作れば後は運まかせというお気楽なポジだ。原資産が動く度にカレンダーを作っていればどれかは取れるだろう。もちろんダイナミック・
ヘッジをすればもっと利益率が良くなる。
つまり、わざわざカバード・コールのような複雑なポジを作らなくてもθで稼ぐという意味ならカレ
ンダーで十分なのだ。しかも最大損失もほぼ同じだ。さらに現実的に見ると、カレンダーの場合は期先の売りの時間的価値はSQ前にほぼゼロになるが期先の買
いはまだ数万円の時間的価値を残している。それを5万円とするとカレンダー・スプレッドの最大損失は5万円となり、これはカバード・コールの半分以下だ。
こ
の事実はネット上のブログでよく見られる甘カレ(レシオ・カレンダー・スプレッド。1:1ではなく2:1とか3:2のように売り枚数を多くした変形カレン
ダー)が実は非常に危ない手法であることを示唆している。売り枚数のほうが多いから当然、無限の損失が出る。一方でカレンダーだから利益は限定されてい
る。つまり合わない。レシオ・スプレッドのように売り枚数が多く証拠金がもっと必要な手法は非常に危険だ。
つまりネット上のオプション・トレーダーのブログでよく見られるカバード・コールや甘カレ、レシオなどは全て甘いリスク査定がされている「危険な手法」である。カレンダーのほうが原資産がどう動こうと最大損失が少ないという厳然とした事実があるのだから。
(恐らくオプション取引はボラティリティーの売買であると考える人は上の指摘をせせら笑うだろう。だが、そうしたボラティリティーが上がるか下がるかわかる「才能ある人」はATMのストラドル売買だけをやってればいいと私は思う。
カレンダーを作った時点ではIVは普通、15-40程度ある。だがSQ前にはATM以外のIVはほぼゼロになる。そういう意味ではカレンダーはIVの消極的な売りでもある)
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