ボラティリティーの裁定取引
(この文章には個人的意見および偏見が含まれています)

ボラティリティーの裁定取引とは何かというと理論価格よりIVが相対的に高いものを売り、先物でデルタ中立にしてIVが正常な値に戻る、つまり値段が安くなることを狙う手法である。取引されているオプションの残存日数が25営業日あるとする。この場合、

高いIV=現在のIV
「正しい」IV=実際にオプションが満期をむかえるまでにおきるであろうボラティリティー

この2つの差額を狙う。だが、オプションの残存日数が25営業日あるとして、オプションが満期を迎えるまでの「実現ボラティリティー」は25日後にわかる。今は誰にもわからない。ここでは予想される「実現ボラティリティー」の代わりにHVないしはSVが用いられる。

HV (historical volatility)とは何かと言うと過去におけるボラティリーだ。SVは統計的ボラティリティー(statistical volatility)のことだ。HVとSVはどう違うのか私にはよくわからないが一般にはSVはここ数ヶ月とかの近い過去のボラティリティー・データを 使用しているようだ。

だが、ここには大きな矛盾がある。何故ならオプションの価値を計算するのに最も広く用いられているブラック・ショールズ式では原資産の動きはランダム・ウォークであるとされているからだ。つまりBS式を信じるならボラティリティーの裁定取引というのは意味がない。

現 実にはIVがHV/SVに対し高いか低いかは理論価格からの乖離率で表されている。私も過去、何度か理論価格より高い物を売り低い物を買い、全体でデルタ中立のポジを作っ たことがあるがほとんど利益が出たことがない。具体的手法で言えばレシオやバック・スプレッドを作った。意外なことにレシオは全くダメだったが、バッ ク・スプレッドは数回利益が出た。

しかし理論価格より高い物を売り、安い物を買い、全体をデルタ中立にすれば利益がでるはずだ。でないな ら理論価格そのものが意味がない。ところが現実には利益が出ないのである。この点に関しては、オプション・トレーダーの間で様々な議論がされている。1つ の答えはBS式が不完全だというものだ。これは十分ありうる話ではあるが、では代わりに何を信じたらいいのかというと信じられるものは1つもない。

で は何故、日本ではボラティリティーの裁定取引が成立しないのか?これは外資系証券会社の取引が理由だと考える。証券界者の取引端末では、今、Callや Putの買い/売りを出したのがどこの証券会社かわかるようになっている。そしてゴールドマン・サクスのような投資銀行がある行使価格のCallないしは Putを売り続けていたとすると、市場参加者はGSが売っているオプションは利益を生まないだろうと考える。結果として理論価格との乖離にもかかわらず、 乖離は埋まることなく、ボラティリティーの裁定取引も(短期的には)成り立たない。

つまり日本での短期売買の主体である外資系証券の手口が結果的に本 来すぐにおこるべきボラティリティー乖離の解消=裁定取引を阻んでいると私は考える。ちなみにオプション市場では個人は10%程度であり、残りの90%は先物やオプショ ンで大口注文を出したのがわかる端末を利用できる証券自己である。

つまり外資系証券により日本市場が「インサイダー市場」になっているためにボラティ リティーの裁定取引が成立しない、あるいは利益を生みにくいと私は考える。この点(日本市場が投機的になっていること)に関して私は大きな不満を持っており、過去に米国SEC(証券取引委員会)に対し**は日経平均で市 場操作を行っているという告発を行ったこともある。いつかアメリカSECないしは財務省に蓄積したデータを送りつける日がくるかも知れない。

なお日本の証券監視委員会は基本的に証券業界出身者が既得権益を守るために、自分たちの勝手な判断で「摘発」を行っていると私は考えている。

個人投資家が証券自己にここまでハンデをつけられるのはおかしい。日本が金融後進国と呼ばれるのにはそれなりの理由があると私は思う。