何故、PutのIVはCallより高いのか?
(以下の文章は誤解を含んでいる可能性があります)

こ れを需要と供給で見るとプットにおいては買い手に対し売り手が少ないように見える。コール・サイドには別に歪みは無いようだ。ではIVが高いプットを売り低い コールを買い、γとベガを中立か、小さいものにした上で、Δ差を先物でヘッジすると効率的に利益が出るのだろうか?私は出ないと思う。

何故ならそうしたIVの乖離が解消されるという保証がないからだ。何故、解消されないのか?これはマーケット・メーカーの都合があるからだ。大体、マーケット・メーカーはあなたのような個人投資家に儲けてほしい訳ではない。むしろ嵌め込み(以下、削除されました)。

ま ず、GSや野村のようなマーケット・メーカーはどうやって利益をだしているのかを考えてみよう。なお大阪証券取引所の事情は知らないので、あくまで一般論 である。まず彼らは板を出すことでは手数料を受け取っていない。逆に先物やオプションの在庫をある程度、そろえておく事を要求される。手数料に相当するの は刻みである。つまり買い値と売値の差額である。ほぼ同時に買い注文と売り注文が入った場合、自動的に差額分(日経平均オプションの場合、5円)の利益が 生じる。

だがATMのように流動性が高い行使価格ならともかく、DITMになるとすぐに反対売買ができない。できないと言う事は原資産の動きによっては大きな損を生み出す。従って流動性が乏しいDITMでは大きなマージンが取れる板しか出さない。

一 方でFOTMでも高い値段(高いIV)で板を出す。バック・スプレッドやヘッジとしての需要があるのだが。何故なら、FOTMでは買い値と売値の刻み/差額が1円である。つまりマーケット・メーカーにとって見れば「手数料」が低いのだ。手数料が低い以上、板を出したく ない。だが板を出す義務を科されているのでシブシブ高い値段で出す。これがボラの微笑みと呼ばれるIV曲線が生まれる理由であることはすでに書いた。

も う1つのマーケット・メーカーの収入源はオプション裁定である。何らかの理由でPut Call Parityが破れた場合、合成先物を作ることでリスクを取らず利益を確保できる。この点でマーケット・メーカーが他の証券会社と比較してどう優遇されているのかは不明だ。自社PCプログラムが自動的に裁定を行っているのは確かなのだが。

だがマーケット・メーカーがオプションの在庫を抱えている以上、個人トレーダー同様にギリシャ文字からくる損失リスクにさらされている。当然ながら彼らもダイナミック・ヘッジをせざるをえない。何故なら、在庫をある程度持つことはマーケット・メーカーの義務だからだ。

私 が考えるに、これがプットのIVがほとんどの場合コールより高い理由ではないだろうか?従来の説明では現物株を持つ投資家が常に値下がりリスクへのヘッジ としてプットを買うことが理由とされた。

しかし年金のような大きな機関投資家が保有資産に占める株式の比率を下げているような場合でもやはりプットのIV のほうが高い。ここ数ヶ月、実際に年金は株式比率を下げていたが、それでもプットのIVはコールより高かった。これはおかしい。大きな機関投資家が株売り を継続していた場合、当然ながら彼らはプットを返済しても買う理由がない。つまりプットのIVが高いのはプットの需要が供給より多いからではないように思える。では何故か?

私 はベガ・ヘッジが難しいからでは無いかと思う。マーケット・メーカーは返済しそこねた様々な「不良在庫」を抱えている。それらはとりあえずヘッジする必要 がある。Δなら先物で簡単にヘッジできる。γならオプションを買うことでヘッジできる。θはとりあえず売りと買いのバランスを取る事で中立にできるが、SQが近づいたらθが大き くなり在庫が大きな損を出す。その為に在庫一掃セールが行われる。つまりオプションが安くなる(IVが下がる)。

問題はベガである。ベガのヘッジは他 のギリシャ文字に比べて難しい。もしプットの売りポジション在庫を抱えている時に暴落がおきるとIVが跳ね上がる。何故なら市場にはシガラミで現物株を ずっと保有せざるをえない人たちがいるのに対し現物株を空売りする人は投機家以外に無いからだ。そうした現物株保有者(多くは機関投資家)が損失を減らす ために成り行きでプットを買うからプットのIVが跳ね上がる。それはプット売り在庫を抱えるマーケット・メーカーにとって大きな損を意味する。マーケッ ト・メーカーは原資産の方向性にかけて在庫処分できないから、プットを売る事はヘッジできないリスク、つまり潜在的に大きな損を抱え込むことに なるのだ。

つまり私の意見ではコールとプットへの需要はほぼ同じくらいなのだがマーケット・メーカーがベガというヘッジしにくいリスクを 抱え込みたくないからプット・サイドでは用心して高めにしか売り板を出さない。

結果的に暴落と暴騰の確立はほぼ同じであるにも関わらずプットのIVが常にコールのIVより高 くなる。従ってプットを売りコールを買い、先物でΔヘッジしてもIVの鞘取りはできない。何故なら、プットを高く売らざるをえないマーケット・メーカーの 事情は変わらないからだ。正確にはSQ近くまでは変わらないはずだ。そこで利益が出るのはθの働きでありベガやIVとは関係ない。

とヘッポコ・トレーダーの私は考える(笑)。