何故、IVが変動するのか?
(下の文章には誤解があるかも知れません)

私にとって不思議な事の1つはIVが個々のオプションによって異なる点だ。また日々、変動する。これは一般には市場参加者の期待や不安の現れと言われているが本当にそうなのだろうか?ここでも、またマーケット・メーカーの役割から考えて見たい。

マー ケット・メーカーというのはGSや野村のような大手証券会社だ。当然、彼らは何らかの相場観を持っており、それに従ってオプション在庫を持っている。 2007年8月にIVが猛烈に上がったことがあった。その理由を考えて見ると、マーケット・メーカーがはるか下の権利行使価格帯のオプション在庫を持って いなかったからではないか?つまり、彼らの相場観では「仕込む必要の無い価格帯」だったのだ。

ところがサブプライムという現象が火を 噴き、原資産、この場合は日経平均、は大きく急激に下がった。当然ながらプットを買うことで現物株保有ポジをヘッジしたい人は市場 に大量の注文を出した。ところがマーケット・メーカーは、そこらの「売れ筋商品」のオプション在庫をあまり持っていなかった。その為に十分な売り板を出せな かった。

あるいはすでに書いたようにさらに下落するトレンドが見えたからベガ・ヘッジの意味も込め、大きなマージンを上乗せしてプットを売った。一方で現物株保有者はともかくプット を買ってヘッジする必要がある。彼らは保守的な機関投資家なので、価格の妥当性よりヘッジの緊急性のほうが優先された。その為にあのような高いIVがお きたと考えられる。

同時に非常に高くなったIVを持つプットを売りまだ安いIVのコールを買い、γとベガをヘッジし、先物を使いΔ中立にして IVの裁定取引をする人が多数いた。結果として日経は下がったがコールは大量に買われた。この場合はボラティリティーの裁定取引が成立するのが誰が見ても明白だったからだ。ここらが 真相だろうと私は考える。

ところで今のようにIVが15-18程度の穏やかな相場で、個々のオプションのIVが異なり、そのIVが日々、 変わる。これは純粋に投資家、投機家の考えを反映したものだろうか?実はここにもマーケット・メーカーの相場観が反映されているのではないかと思う。

今のよ うに変動幅(ボラ)が小さい時、当然ながらマーケット・メーカーは自分たちの相場観に基づいて狭い範囲のオプションを集中的に仕込むだろう。結果として、安売り競 争が激しくなりIVが下がる。ここでAのマーケット・メーカーが10500円のコールを大量に在庫している場合、A業者はそこで価格破壊をしてでも手持ち の在庫をさばこうとする。Bの業者は少し異なる相場観に基づいて9500円のプットを大量在庫している。しかも、ここは将来、需要が出るだろうからと考え 売りおしみをする。具体的には高いIVを提示する。

つまりマーケット・メーカーが中立な業者ではなく、それぞれ相場観を持つ大手証券会社 であるために、個々のIVの違いや変動がおきると私は考える。もしマーケット・メーカーが完璧にPCプログラムで全ての価格帯のオプションを同じように在 庫していれば、そうした現象はおきないはずだ。大体、IVの「不合理な高低のバラツキ」があれば裁定業者が裁定するはずだ。

つまりIVのばらつきはマーケット・メーカーによる売れ筋商品の在庫量と相場観で決まる部分がかなりあるのではないかと私は考えるのだ。同時にIVの裁定というのは相当に難しいことも示唆している。