何故、金融危機になると金が買われるのか?

今、 金が買われている。それはユーロという通貨が新たな金融危機を引き起こしたからだ。だが何故、金融危機がおきると金が買われるのだろう?銀やプラチナ、あ るいはモリブデンやタングステンではなく金が買われる理由は何なのか、これは金業者のサイトに行っても書いてない。そこで私が考えるところを書いてみよ う。

2007年8月以降、サブプライム危機が始まり、NY株価は大きく値下がりした。その内に不思議な現象がおきた。それは何かという と、NY市場が閉まる前の30分前くらいから猛烈な買いが入り株価が上昇するというものだった。2chの市況板では「ダウ防衛隊」と呼ばれた。株価暴落を 阻止するチームは確かにある。Plunge Protection Teamというアメリカ政府の組織である。だが、それにしてもあまりに露骨だし、だいいち資金がどこから出ているのかも不明だった。

その 内に誰かが説明したのだが、いわゆる「ダウ防衛隊」はアメリカ政府による介入/買い支えではなく欧州系の投資家によるナンピン買いだったらしいのだ。その 人の説明によると、欧州は膨大なアメリカ株を保有していた。そこにサブプラ危機がおきた。当然ながら、彼らが保有するアメリカ資産は大きく目減りした。そ こで欧州投資家はナンピン買いを行い、平均買い単価を下げたのだという。個人的には、この説明が恐らく正しいと思う。

で、最初の何故、金 融危機になると金が買われるかだが、私が考えるところ、金価格の毀損を恐れる人や政府が世界にたくさんおり、彼らにより金の価格を維持しようという大きな 力が働く。もちろん、それは国債や銀、プラチナ、バナジウムやイットリウム、あるいは原油や小麦、コンゴ音楽(?)にも働くのだが、金に対し働く力が最も 大きいことを世界の投資家は歴史的な教訓として知っている。つまり、金そのものに魅力とか価値がある訳ではなく、金の価値を守ろうとする勢力が非常に大き いために有事に金が買われるのではないかと私は考える。

すでに書いたように江戸時代の日本では金と銀、両方が通貨として使用されていた。イブシ銀の演技とか銀を評価する表現もある。これは実は中国でもあるいはローマ帝国でもそうだった。有名な例では、沈黙は金、雄弁は銀という表現がある。

Silence is golden, speech is silvern.

これは銀本位時代のローマの教訓だと私は理解している。

いずれにせよ結果として金が銀より選好された。それは偶然かも知れないし、なるべくしてなる事情があったのかも知れない。だが、金融危機がおきると金が買われる理由は金が持つ価格維持メカニズムが商品の中で最強だからと考えるのが自然だ。

だが、さらに金融危機が進むと金すら買われなくなるだろう。何故なら、金を買い支える人たちは通常の社会機能が存続することを前提に買い支えているからだ。もし社会機能あるいは貿易が止まるような事態になれば金を買う人はいなくなる。

何 故なら金は食べられないからだ。人畜無害なので食べたければ食べてもいいのだが・・・(金を食べると歯茎から血が出ませんか?)そうした状況ではむしろ水 とか食料、農地のほうが価値があると見なされ、金価格維持メカニズムは働かないだろう。そうした荒れた世界に胸に7つの傷を持つ男が現れ、暴れ回り民衆を 苦しめるルーピーズの秘孔を突き「オマエはすでに死んでいる」と言ってくれれば、それはそれで良いような気がするが(笑)。

つまり金それ自体が特別な意味を持つわけでは無く、通常の社会機能が存続する状態で価格維持メカニズムが最も働く商品だから、危機が深まるごとに金価格も上昇すると私は考える。そうでなければ何故、金が特別視されるか、誰も説明できないではないか。