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「開運! なんでも鑑定団」に見られる金融の暴走 2010.06.26
すでに何回も書いたように私はTVを見ないのだが、日本に住んでいる以上、やむなく見る事もある。今回はたまたま見たテレビ東京「開運! なんでも鑑定団」の話である。
私
が不思議に思ったのは何故、鑑定する方たちは出品物の値付けをすることができるのかである。例えば音楽なんて料理と同じレベルの完全な嗜好品であり、ラー
メン次郎のラーメンは2万の価値があると思う人もいれば、私のようにカロリーが高い物は食べたくない、つまり無価値であると考える人もいるだろう。何を基
準に値付けをしているかである。そこで検索を続けているうちに実に懐かしい名前に出会った。
引用
http://www.youtube.com/watch?v=kcAqaSyTReU
小倉知香子さん、テレビ東京「開運! なんでも鑑定団」出演
引用終わり
こ
の小倉さんというのはクラシックのハープ奏者なのだが80年代の終わり頃はラテンも演奏していた。あるFM局で小倉さんの演奏をたまたま聴いた私は面白い
と思い、FM局に電話をかけた。受付で用件を聞かれたが「オタクの番組で小倉さんというハープ奏者の演奏を聴いた。面白かったので仕事を依頼したい」とい
うと簡単に制作プロデューサーに回してくれた。自分が制作した番組をほめられて悪い気がするはずが無く、制作プロデューサーは簡単に小倉さんの事務所の電
話番号を教えてくれた。この頃の小倉さんは全く売れておらず、豪華客船に同行し船内アトラクションでハープを弾くような仕事をしていた。私は簡単に小倉さ
んをスタジオの仕事に雇うことができた。
場所は横浜市関内にあるセーラ・スタジオで録音エンジニアは大山さんという前歯が欠けた人だった。スタジオは今でもちゃんとある。
引用
http://www.saila-s.jp/top.html
港横浜のベイフロント・桜木町にあるヨコハマセーラスタジオ。レコーディング・リハーサルスタジオ・ドラムスクール・アコーディオン教室・レンタル音響機材(P.A)・レンタル楽器 etc・・・様々なサービスでお客様の音楽活動をサポート致します。
平日:10:00am〜土日祭日:9:00am〜 〒231-0062 横浜市中区桜木町3-9
引用終わり
この時、私の演奏バッキングに呼んだのは
ドラムス:ナーミ・メネセロカセビ(後に小野リサさんのツアー・バンドのドラマーになる) 打楽器:フランシス・シルバ(後に松岡直也バンダ・グランデの打楽器奏者になる) フルート:赤木りえ(後に松岡直也バンダ・グランデのフルート奏者になる) ハープ:小倉知香子
という面子だった。豪華な顔ぶれに見えるが、みんな全く売れてなかった。フルートの赤木りえさんなどは何故、自分が呼ばれたのか理解できなかったらしく「どこで私の演奏を聴いたんですか?」と初対面の挨拶の前に言ったくらいだった。
横
浜セーラ・スタジオのチーフ録音エンジニアである大山さんは元々はドラム奏者だったそうで、初めて見るブラジル人打楽器奏者の演奏に興奮気味だった。日付
は確か1990年2月、1mの大雪が降った日だった。私は横浜市板東橋に住んでいたので問題なかったが小型バンで機材を運んでくる人は苦労したようだ。私
は自分の演奏がドヘタであることはわかっていた。そのセッションは純粋に私が作曲しアレンジしたものをうまい人に演奏して曲に仕上げてもらうという作業
だった。当然ながら私はあまり楽器を弾かず、録音エンジニアである大山さんと話をした。私は全くこの人を知らなかったのだが、インディーズでは知られた人
らしく、スペインのプログレ・ロックバンドからミキシングの依頼が来て仕上げたCDとかを見せられた。驚いたことに本当にCDに大山の名前がクレジットされてい
た。
という訳で20年前の昔話になってしまったがテレビ東京「開運! なんでも鑑定団」に出演された小倉知香子さんの姿を久しぶりに見た。昔もクラシックの「にをひ」がプンプンして嫌なヤツだなと思ったが、今も変わらず健在なようで何よりだ(笑)。
で、
何を言いたいかというと美術や骨董は芸術として化石になったと言いたいのだ。そういう風潮を日本で始めたのは金儲けの神様(笑)邱永漢氏で、具体的には
「1枚の絵画」という雑誌である。私が知る限り、日本で絵画を投資資産として評価した専門紙は上記の雑誌が最初である。邱永漢氏は一度、会ったことがあ
る。あまり良い印象は無い。
さて、ここで私が持つ大きな疑問は何故、絵画は投資資産になることができるのに音楽はなれないのかである。英
語辞書をひかれるとわかると思うが、artが意味するのは1に絵画であり、2に音楽も含む広い意味での芸術である。1の意味ではファイン・アートという言
葉も用いられる。つまりアートとは本来、美術を指すのだ。音楽は2流芸術なのだ。
絵画や骨董が投資資産になるということは、ある程度大きな市場があり、絵画の投資グレードを評価する共通評価基準が存在
することを意味する。音楽がそうならないということは音楽は純粋な嗜好品であることを意味する。私は美術に関しては門外漢なので見当外れのコメントは避け
るが、投資資産としての市場が存在し金銭的評価基準が存在するような「もの」を芸術と呼ぶのが適切かどうか疑問に思う。
何故なら私にとり
芸術というのは何らかの感動なり興奮をもたらすものだからだ。感動や興奮が格付けされ投資商品として売買されることに大きな嫌悪感を覚えるからだ。随分、
長くなってしまったが私はやっとテレビ東京「開運! なんでも鑑定団」を見るたびに大きな違和感を覚える理由を理解できたのだった。
感動や興奮の統一基準は存在しない。ましてや他人に強制される筋合いはない。それがTVではあたかも基準が存在するかのように扱われている。これはサブプライムとかCDSとかCMBSを連想させる。要するに「金融の暴走」である。幻の価値基準である。
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