音楽の複製は可能か?

昔、2chの音楽配信板を毎日のぞいていた時期があった。その頃、音楽は簡単に複製ができる、絵画などは物だから複製ができないという主張を読んだ。記憶が正しければ津田大介氏のxtcでの主張だったと思う。これは本当にそうなのだろうか?

例 えば、私はサイトにmp3を置いている。全く同じ物をPC上デスクトップにも置いている。このファイルは全く同じはずなのだが、ネット経由で聞いたほうが 「良く聞こえる」。製作者でありミキシングもやった私の耳にはそう聞こえるのだ。理由を考えて見たが、どうもネット経由で聴いた場合、何らかの信号エラー がおきるようだ。それが私の耳にはmp3が持つデジタルの冷たさを抜いて、音のまとまりが良くなったという風に理解されるようだ。つまりファイルとしては 全く同じであり再生環境も同じなのだが、ネット経由で聴いたほうが(音の好ましい劣化がおきるために)良い音に聞こえるのだ。これは音楽は簡単に複製を作 れるという概念を正面から否定するものだ。

逆に絵画の複製は絵画が物であるが故に不可能だろうか?それでは世界中に無数にある贋作は一体、何なんだ?社会の99%の者が本物かどうか見分けがつかない贋作は絵画の複製ではないのか?ほんの一握りの専門家しか鑑定できないようなレベルの作品は本物とどこが違うのか?

つ まり私の意見は津田氏と正逆であり、大衆レベルで言うなら絵画も音楽も複製が作れる、専門家レベルで言うならデジタルですら複製は作れないと言うものだ。 津田氏はビット毎にエラーがおきてないか確認し完璧なデジタル・コピーが作れることと音楽を完璧に同じように再生することを混同している。我々は音楽を ビットで聴くのではない、鼓膜の振動を通し、脳内で音楽として再構築しているのだ。そして接続環境、CPUの温度、部屋の温度や湿度が異なる以上、音楽は 聴くたびに異なって聞こえる。

というのが私の主張である。所詮、自他ともに認める変人のたわごとである(笑)。しかし、もっと滑稽なのは オーディオ・マニアを自称する人たちである。すごい人になると100万円以上する再生装置・再生環境を作る。再生装置で音が変わるのは事実だ。今、押入れ を探して見たら純銀の30cmケーブルが出てきた。これは5千円した。純銀のケーブル、あるいはベルデンとかモガミのケーブルでも良いのだが、音が変わる のは確かだ。それが好ましい変化かどうかは別の話だ。私もそういうケーブルを持ってるが使わない。何故ならケーブルにこるよりも音楽ファイルを32ビット 浮動小数点ファイルにして聴いたほうが(私の耳には)はるかに良い音になるからだ。

オーディオ・マニアは音楽ファンではないが、しかし本 当に好きなアルバム/曲があるなら、マスターテープのコピーを入手して自分が考えるベストなファイル・フォーマットで聴いたほうがケーブルなどに凝るより はるかに良い音が出るのだが・・・・ そしてレコード会社がそうしたマスターテープを1曲数十万円で売りに出してもいいだろうと私は考える。もちろんデジ タル透かしなどを入れて、不正使用を防ぐことを前提にしているが。

私の中のオーディオ・ファン的な部分の考えをまとめると上記のようにな る。だが、本当に力のある音楽はLPのミゾが砂でびっしり埋まっているようなキンシャサの店頭販売物でも、その良さは聞き手である私にちゃんと届く。それ は私の耳が偏っているからかも知れないし、コンゴ音楽の持つ爆裂パワーは音が悪くてもちゃんと伝わるということかも知れない。いずれにせよ、音楽であれ絵 画であれ、大衆レベルなら複製は簡単に作れると私は考える。