全てのオプション戦略が死ぬ時
昨日(2010.0814)の夕方、海岸にそってサイクリングしたら大きな黒アゲハ蝶が死んでいた。私は熱射病で半分、死にかかっているのだが、夏は確実に終わろうとしているのを感じた。
WSJの情報によると投資銀行や大手証券会社の収益の1/3以上がHFT(ハイ・フリークエンシー・トレーディング)から生まれているそうだ。HFTあるいはアルゴ取引と呼んでも良いのだが、それは何らかのアルゴリズムに基づく裁定取引である。
今
のオプション市場もアルゴ全盛である。ほとんど人間の気配がしない。大証はシステムをさらに最新のものにすると言ってるので、年末には従来型のボラティリ
ティーの裁定取引はアルゴにより独占され個人が入り込む余地は無くなると思われる。従来のオプション戦略のほとんどが優位を失うのではないか?私個人とし
ては大歓迎である。大体、これまでボラの歪みが裁定されることなく放置されてきたのがおかしいと考えるからだ。それは要するに市場が未熟だからだ。
では従来の戦略はまるでダメになるかと言えば、そんなことは無いと思うが「修正」は余儀なくされるだろう。恐らく一番、影響を受けるのはバックスプレッドではないか?これまで使用されてきたバックスプレッドはこうである:
1.原資産(日経平均)から500円程度下のPutを数枚売る
2.売ったPutのベガ総計に等しくなるように、より外のPutを買う
3.全体でクレジットになるようにする(売り金額>買い金額)
4.Δ、γ、θは大きくなければプラスでもマイナスでも良い
暴
落するとPutのIVが上がる。予想外の暴落の場合、OTMのPutのIVが上がる。加速係数としてのベガが働きOTMのPutの値段が跳ね上がる。
結果として大きな利益を生むというのが従来型バックスプレッドだった。こうしたバックスプレッドの時代はもう終わったのではないかと考える。何故なら、そうした歪みを取るのがHFTやアルゴなのだ。で、HFT全
盛の時代に有効な戦略は何かというとバタフライだと私は考える(リバース・カレンダーはまだ考えがまとまってないので、ここでは省略)。
と
ころでBWBという言葉をご存知だろうか?これはBroken Wing
Butterflyの略である。ではBWBとは何かというと変形バタフライである。ロング・バタフライがレシオに近い性格を持ち、ショート・バタフライが
バックスプレッドに近い性格を持つことはすでに書いた。これを行使価格を操作することでより性格を強めることを目的としている。
例えばLバタの場合、以下のように変形する。
Call@9250 1枚買い
Call@9500 2枚売り
Call@10000 1枚買い
Sバタの場合、以下のように変形する。
Put@9250 1枚売り
Put@9000 2枚買い
Put@8500 1枚売り
Lバタはよりレシオの性格を強め、Sバタはよりバックスプレッドの性格を強めている。ただ売り枚数と買い枚数が同じという意味では両者ともリスクは限定されている。BWBの欠点を強いて挙げれば、作るのが面倒くさいことか。
HFT/
アルゴ取引と大証のシステム強化が私の主張するように従来のボラティリティー取引を無効にするかどうかは現時点ではわからない。ただSバタでのBWB
はベガに全く依存しておらずΔで利益/損失が出る。そういう意味では安定した「バックスプレッド」として人気が出るのではないか?
そう考えて、ここ2ヶ月ほどBWBを作って見たが、個人的な結論を言えば1:2のありふれたバックスプレッドが一番わかりやすくてヘッジとして効果があるような気がする。なかなか難しい(笑)。