何故、ボーカロイドはつまらないのか?

私はボーカロイドはつまらないと思う。インチキさがプ ンプンしているからだ。その最大の理由は歌声合成技術がどうこうという問題ではなく音程が正確すぎる点にある。今は色んな音程補正技術があるので「普通の 歌手」の歌を完璧に音程補正することも可能になった。ではボーカロイドと違わないじゃないかと言われるかも知れない。ところが大違いである。人間の歌声は 何らかの感情に基づき外れる。外れるところに人間としての味がある。ところがボーカロイドは最初から平均律で正しい音程で歌う。それは極めて非人間的なの だ。

昔、私が別のサイトをやってる頃、ジャズ・ジョークを集めようと考えた。そうするとオランダのフルート奏者のサイトがジャズ・ジョー ク専門コーナーを作り100を超えるジョークを集めているのに気がついた。私はこの人にメールを送り「オマエのサイトのジャズ・ジョークは非常に面白い。 オレのサイトで日本語に翻訳して紹介していいか?」と聞いたところ「もし紹介するなら必ず出典元であるオレのサイトと名前を記載してくれ」という条件付き で了解してくれた。このジャズ・ジョーク集は相当、集めていたのだが、その内にコンゴの内戦が激しくなり、私は鬱状態になりサイトを閉鎖してしまった。結 果として集めたジャズ・ジョークは未だに発表されてない。

その中でもベストと思ったのが以下のジョークである。

「完全に音程のあってるベース演奏をどう呼ぶか知ってるかい?」
「知らない。どう呼ぶんだ?」
「それは偶然の一致と言うんだ」

ジャズのベースのようにフレットの無い楽器では滅多に音程が合わないことを皮肉ってる訳だ。最初の電気ベースはフェンダー・プレシジョン・ベースだが、このベースがプレシジョン(正確)と呼ばれたのはフレットがついているために音程が(ほぼ)合っているからだ。

つ まり楽器にせよ歌声にせよ、音程が完璧にあってるのは我々の耳には不自然に聞こえるのだ。それは音程が外れた演奏に耳が慣れているからだ。特に人間の歌声 はそうだ。ところがボーカロイドでは音程が正確すぎるのだ。それが私の嫌悪感をひきおこす。何故なら、人間の歌声は細かいレベルで平均律から外れるところ に魅力があると私は考えるからだ。

同じことはMIDIでのギター演奏や管楽器演奏にも言える。それらは極めて不自然だ。何故なら音程が正 確すぎるからだ。ではランダムに音程をずらせば良いかというと、それをやると音痴のロボット演奏のように聞こえる。音楽的に音を外さない限り、それは人工 的と見なされてしまう。

ボーカロイドの最大の欠点はここにあると思う。つまり音楽的に音程を外す機能が無いために大変な労力でピッチベン ド・データ(音程の細かい変化)を入力するしかない。今はもう、音程が(平均律で)正確だ、素晴らしいという時代ではないのだ。音程が曲の展開、「歌手」 の性格にあわせて自然に外れていることを評価する時代なのだ。あんまり、ここらあたりを批判すると「ならオマエ、自分の歌声をアップしろ」と反論されかね ない。いや別にしても良いのだが・・・

繰り返すが、音程が正確すぎるボーカル/ボーカロイドは気持ち悪いだけだ。開発元であるヤマハが早くこの「欠陥」に気がつくように期待する。つまり音楽的に音程を外すアルゴリズムの組み込みである。それは少し考えれば誰でもわかることなのだが・・・・