今日も元気だ、ワインがうまい
2010.09.11

最近の安ワインは本当に美味 い。それも紙パックで売られているようなものに驚くほど美味しいものがある。私がワインを飲み始めた頃、1980年代の紙パック・ワインは匂いをかぐだけ で吐き気がした。これは、紙パックの内側に塗られているパラフィンが溶けるために味が変質するのが理由だ。瓶詰めは当時でも、それほどひどくは無かった。


何 故、最近のワインの中には異様に美味いものがあるのだろうと考えているうちに気がついた。ジンファンデルが使用されているのだ。私はこのカリフォルニア州 特産のワイン品種が好きで、わざわざケースで取り寄せて飲んでいた時期もあった。実はジンファンデルという曲も作っている。その内に発表したい。

と ころでジンファンデルは典型的な安ワイン用品種と考えられている。実際、アメリカのスーパーでマグナム・ボトルで売ってるのはほとんどジンファンデルだ。 だが私はこのワインの独特のかをりが好きだ。そしてジンファンデル好き故に、いつもワイン・ファンから馬鹿にされるのだった。どうも円が強くなったために 安ワインの一部がジンファンデル中心になり私は最近の安ワインは美味いと感じるようだ。

ところで80年代の名古屋市覚王山にPというワイ ン・バーがあった。私は興味ないのだが、飲み友達に誘われて何度かいった。ここのマスターは昼間はワインの輸入業者をしており、夜になると自分が輸入した ワインを飲みながら客との会話を楽しむという実にスノッブなお店だった。何せ相手はワインの輸入業者である。下手に講釈をたれようものなら「じゃあ、実際 に飲んでみましょう」とマスターが言い、倉庫から出してきたシャトー・マルゴーが抜かれたりする。5人くらいの客で負担するから、一人頭にするとそれほど 高くはなかったが、ワインをグラス数杯飲んで1万円請求されてはたまったものでは無い。1万円でも良心的な値段なのだ。何故ならマスターも飲むからお客5 人+マスターの6人割りで計算されるからだ。

1回、これをやられてから私は完璧にこりてしまい、このお店では一切、ワインの講釈をしなく なった。ある日、マスターが「竹本さんは普段、何を飲んでいるのですか?」と聞いた。私は正直にKWVの白を飲んでますと答えた。これは1本1800円く らいのワインなのだが私にして見れば十分、高級ワインだった。そうするとマスターが「KWVか、確か在庫があったな」と呟き倉庫から出してきたものを抜い た。もはや油断も隙もないのだ。

マスターは「悪くはないが典型的な安ワインだな」とコメントをした。これは事実その通りなので私は黙って いた。ところが次にマスターは「これ、ヌーボーじゃないの?味も香りも若すぎる」と言い出した。ここで私と論争がおきた。私は「ヌーボーではない、最低で も1年は寝かしてる」と主張したのだが相手にされなかった。そこで私はワインのラベルを指さし"late vintage"と書いてるでしょ、つまり十分熟した葡萄を醸成したと主張したのだが、私以外はみんな"late vintage"だから最近のもの、つまりヌーボーだと主張した。

つまり私は"late vintage"をlate-harvested wine(樹の上で十分、熟した葡萄を収穫し醸成した)と解釈したのだが、他の人はlateを新しいと解釈した訳だ。幸いなことに輸入元である国分がちゃ んと、そこらの年月日を書いていたので、この論争は私の勝ちになった。

今から考えるとどうでも良い話なのだが、そういう「美味しんぼ」的な部分も少しは経験しているのだ。ちなみにKWVは順調に大きくなったようで結構、立派なサイトを持っている。

http://www.kwv.co.za/

最後の.zaでわかるように南アフリカのワインである。

で、私は思うのだが美味しんぼの世界はどう考えても異常であると・・・・ 上の例を見ていただきたい、プロであるワインの輸入業者が、素人と一緒にワインを飲み、自分もワインを飲み、ワイン談義を楽しんだのだ。しかも素人が正しい場合はちゃんと間違いを認めたのだ。

バブル期を経て、全てのまともなものが破壊されてしまったように私は感じるのだが・・・・