リズムの優位性を考える
2010.09.15
(この文章は2003年頃に書いたものに加筆しました)
音楽の3要素リズム・メロディー・ハーモニーの中でリズムが一番、基礎的=重要であることはクラシックやジャズの人にも同意してもらえると思う。しかし何故リズムが一番、重要なのかはどんな音楽解説書においてもきちんと説明されなかったと思う。あえてその説明を試みる。
人
類はかつてジャングルの中で暮らしていた。やがて草原に出て二足歩行を始めた時、人間を人間たらしめている脳の部分、大脳が急速に発達した。だがあまりに
急速に発達したために小脳や中脳といった古い脳と大脳の間に葛藤がおきるようになった。古い脳はAという行動を取れと命令するのに対し新しい脳はBと主張
するからだ。結果として人類はストレスから逃れられなくなった。
http://www.geocities.co.jp/HeartLand/2989/brain1.html
(このサイトは古いURLをそのまま書いています)
上
記のサイトにあるように、人類が進化し社会が複雑になるほどストレスが増え続けることになる。そうしたストレスを解消する手段として一般的なものにアル
コールがある。アルコールは大脳の働きを一時的に麻痺させる。これにより小脳・中脳といった古い脳と大脳という新しい脳の間の葛藤が緩和される。実はリズ
ムも同じような働きがある。私が考えるところ、我々はストレスを解消するために音楽を聴くのだ。
もちろん音楽の聴き方は様々だ。ワグナー
のような壮大なオーケストレーション、ジャズの高度なアドリブ、ボサの心地よいリズムと高度なハーモニー・・・・。だがどういう音楽であれ必ずリズムがあ
る。リズムがない音楽は音楽ではない。ちょうどアルコールのない酒が酒でないように。
ワイン愛好家の多くは味と香りを追求する。彼らはワ
インのおいしさはあくまで適度なアルコールが存在するという前提を忘れがちだ。ワインをゆっくり暖めてアルコールを飛ばした後で、飲んでみると良い。アル
コールの無いワインがどれだけ不味いかわかるだろう。音楽がアルコールと決定的に異なる点は心に働きかけ情動をおこし人間を感動させたり興奮させる部分だ
ろう。だがそうした高度な脳の働き、例えば何に感動するかは個人差が大きいので、これ以上ふれない。
ワインにおいてアルコールのベースの
上に味と香り(flavour/aroma)があるように音楽もリズムという基礎の上にメロディーとハーモニーがある。リズムがメロディーやハーモニーに
対して優位なのはメロディーやハーモニーがないリズムだけの音楽は成立するがリズム抜きのメロディーあるいはハーモニーだけの音楽は成立しないことから明
白と私は考える。アフリカの部族音楽の多くがリズムだけの音楽だ。
ではメロディーだけの音楽はあるのだろうか?ビートルズの「イエスタ
デー」のメロディーをフルート独奏で演奏した場合を考えてみよう。実はこの場合でもリズムは存在する。もちろんバロック風にもレゲエ風にもサンバ風にも演
奏できる。だが「イエスタデー」をフルートで演奏するためには何かのリズムを選びその上で演奏するしかない。
さらに「イエスタデー」のメ
ロディーは同時に何らかのコード進行も示唆している。ハーモニー(この場合はコード進行を考えている)が決まっている場合も自然に聞こえるメロディー/ソ
ロは限定される。限定されるからアドリブ理論が成立するのだ。つまりメロディーとハーモニーは実は不可分なのだ。
(ここではリハーモナイゼーションという洗練された技法は考えないことにする)。
1.リズムだけでも音楽は成立する
2.メロディー/ハーモニーだけでリズムのない音楽は存在しない
これによりリズムのメロディーやハーモニーに対する優位が証明されたと私は信じる。
だが、あなたが信じるかどうかは、あなたの自由だ。