スイングって一体、何なのさ(笑)
2010.09.18
デューク・エリントンの名曲に「スイングしなければ意味ないね」という曲があるようにジャズにおいてスイングは非常に重要なものとされている。だが何がスイングか、どういう状態がスイングなのかのきちんとした説明を私は読んだことがない。
以
前あるジャズ雑誌(スイング・ジャーナル。黙祷)が有名なジャズ・ミュージシャン達にスイングとは何ですか?と質問して回ったことがある。だがスイング
というのはミュージシャンにとっても説明不可能なようで、ある女性歌手は「ほら、わかるでしょ、あれよ」と答えていたが、それでわかる訳がない(笑)。わ
からないからジャズ演奏者に聞いてるのである。
そこでコンゴ音楽ファンである私がスイングとは何かの明確な自分なりの定義をここに書いてみることにした。ここでのミソはジャズをアフリカ音楽として捉えることにある。
ス
イングしている状態では、フレーズが次々に出てきて、ある種の疾走感が生まれる。ところでそうした疾走感を妨げる要素は何かと考えるとブレス、つまり息継
ぎである。ジャズでもメインはサックスであったり歌手だったりするので当然息継ぎが必要になる。そこでフレーズが分断される。
もちろんピ
アノやギター、打楽器などは息継ぎをしなくても良いのだが、実際にはそうした楽器演奏の頂点は楽器を歌わせることだから、やはり息継ぎが必要なくても休止
を入れなければいけない。実際、楽器を演奏していて音がえんえん連続する状態はあまり気持ち良い状態ではなく、本当に調子が良ければギターであろうとやは
り「息継ぎ」をするのである。
ところでコンゴの公用語リンガラ語で「こんにちは」はムボテ(mbote)と言う。このムの音は非常に弱いため日本人にはボテのように聞こえる。実際アフリカにはンやムという非常に弱い音で始まる単語や名前が無数にある。この考えをスイングにあてはめて見よう。
サックスを吹いていて息継ぎをするために休止(無音状態)する。だが、アフリカの言葉でンのようにほとんど聞き取れない音節から「フレーズ」が始まることを考えると、この無音状態を実は音はないけれども次のフレーズの開始部分ととらえることもできる。
そ
うすると息継ぎなどで無音状態が生まれても、それは次のフレーズの頭の部分だからフレーズがとぎれることはなく永久に続く。もちろん、聞き手がそう感じる
ためには無音状態にすでにフレーズが始まっていたと感じさせるリズムの取り方や音の選び方(フレージング)をしなければならない。これは音の説得力の問題
だ。実はスイングのその部分だけが定義不可能なのであり、スイングそのものは今言ったように「無音からフレーズを始める」、これだけであるというのが私の
考えだ。つまりスイングとはジャズのアフリカ的本質が形を変えて現れたものと私は考える。
追記
個人的には昔、朝から晩まで聞いていたChuck Brown& Soul Searchersの
http://www.youtube.com/watch?v=BYYLITrG1Ys&p=8C9B9424A3009CE2&playnext=1&index=11
を想い出す。この頃まで、アメリカ黒人音楽は輝いていたように思う。ちなみに、チャックのバンドでドラムスを叩いていたジュジュにある日、マイルス・デービスから電話が入り、マイルスのバンドでドラムを叩くようになったという逸話はあまり知られていない。
こ
のチャック・ブラウンが日本公演を行った時に、あるファンがトイレで小便をしていたら隣にチャック・ブラウンが入ってきたという。「演奏、とても良かった
です」とその日本人ファンが感想を言ったらチャックは「そうかい、気に入ってくれてありがとう」と答えたという。このエピソードも私は好きだ。