夢のワタカノ島
2010.09.21
さて、私が朝日新聞社で広告営業をやっていた
時期、私は本当にコンゴ音楽に没頭していた。広告募集というのは一人ではなく、広告会社(広告代理店)の人とペアで募集して回ることもあるのだが、私がコ
ンゴ音楽以外に全く反応しないために、とうとう怒り出した人がいた。大広のSさんという短気だが気の良い人だった。
Sさんは「オマエ、若
いのにオンナとか興味ないのか?」と聞いた。私が普通にありますがと答えるとSさんは「なら一緒にワタカノ島にいこう。あそこはええで。フィリピン娘
が・・・・」と解説を始めた。Sさんの話によると鯛やヒラメだけでなくフィリピン娘も舞い踊る地上の楽園だと言う。
それを聞いた私は考え
込んだ。フィリピンと言えばアジア発の唯一のラテン・リズム、ドドンパの発祥の地である。東京ドドンパ娘などとは違う本物のドドンパが見れるなら行こうか
と考えたのだが、S氏の提案したプランは一泊コースであり、次の日に定時出社の私には無理だった。結局、断った。
大体、ワタカノ島までい
かなくても名古屋のすぐ近くには岐阜の金津園があった。こちらは「北の楽園」と社内では呼ばれていた。私は性欲解消を非常にドライに考えていたので「竹さ
ん、今晩、どうするの?」とか聞かれると「金津園に行き性欲を解消します」と平然と答えていた。みんな、特に女性はあきれた顔で私を見た。私は性欲がたま
ると犯罪に走る可能性があると本気で考えていたので、そうした性欲処理は当然の日常行為と考えていたのだが・・・・
ある日のことである。社内食堂で昼飯を食っていた。たまたま、そのテーブルにいたのは歴代の三重県広告担当ばかりだった。私は思いきって尋ねてみた。「ワタカノ島に行ったことあります?」
私より5歳ほど年配の男性は「ワタカノ島か、ハハハ」と笑った後、黙りこくった。そして誰も、その話題に触れようとしなかった。何か、みんな話したくないエピソードを抱えているようだった。
都会に生きている者は全て、心に傷を負っている、私はそうした熱い思いで胸がいっぱいになりながら、社員食堂のドス黒く濁った名古屋風みそ汁(赤だし)をすすったのだった。
ピース&ラブ(笑)