ワールド音楽はフランスの国策だった
2010.09.29

90年代始めワールド音楽が盛んだった頃、パリはその首都だと言われた。しかし本当にそうなのだろうか?

90 年代の初めにパリでパパ・ウェンバのコンサートを見た。12月24日のクリスマス・イブである。当然、私は異国の音楽を愛すフランス人白人が会場にたくさ んいると思っていた。中に入って驚いた。千人近いキャパシティーの会場を埋め尽くしているのは、アフリカ系の人間だけだったのだ。私は会場をグルッと見ま わしてやっと一人若い白人女性を見つけた。どうやらボーイ・フレンドがコンゴ人のようである。

私は唖然とした。一体、これのどこがワール ド音楽の首都なのだ!後日、他の日本人アフリカ音楽ファン人に話を聞くとみんな私と同じ感想を持っていた。ワールド音楽というのはフランス政府による観光 産業振興策ではないかと思えてくる。流行の表現を使えば、国策音楽である(笑)。

パリにいるコンゴ人の多くはマフィアとつながりを持つと言われコンサート 会場も「危険」ではあった。しかし千人キャパで白人一人はないだろうと思う。私はウェンバのインターナショナル・バンドが嫌いであり、何故あのようなふぬ けたバンドを作ったのか理解できなかったが、ひょっとすると理由は白人をコンサートに呼ぶためだったのではないかと推測する。

(インターナショナル・バンドというのは日本人打楽器奏者ケイコさんを含むウェンバの多国籍バンド。もちろんアフリカ人を対象にしたバンドは全てコンゴ人により構成されている)

つまりパリでワールド音楽が盛んに制作されているから、フランス人はアフリカやアラブの音楽が好きだというのは全くの幻想と私は考えるのだ。

と ころで今、サルサのダンス教室があちこちにある。80年代からキューバ音楽を聴き、エグレム/アレイートと言ったキューバの国営レーベルのアルバムを苦労 して入手し聴いてきた私には、これも又うさんくさく見える。日本人は急にキューバ音楽の良さ、クラーベやトゥンバオの魅力に気が付いたのだろうか?サル サ・ダンス教室は新しい形態のOMMG/ツバイ/仲人センターではないのか?音楽なんてどうでも良いのではないか?

ところでキューバでも本当にディープなソンでは一人でつま先だって内かがみで踊る。ペアで踊ることはない。ドミニカのメレンゲは基本的にはペア・ダンスなのだが、本当に音楽が高まると一人一人勝手に踊る。つまりラテン音楽=ペア・ダンスでは無いのだ。

ここでもアフリカの姿が歪められているように私は感じる。