オーディオ・ファンをからかう(笑)
2010.09.29
(これはLPを持ち歩くクラブ音楽系DJをからかう文章。書いたのは2004年頃と思われる)
デ
ジタルは冷たい、アナログは暖かいというのがクラブ音楽シーンでは半ば常識になっている。だが私はそう考えない。
ある時、アナログ盤の売上の方がCDより
ずっと多いというレコード店主と軽い喧嘩になった。そのお店の店主はアナログは暖かい、聞いててほっとするとアナログ盤を絶賛した。だが、ここには「大きな
勘違い」があるのだ。少し嫌みだし自分でも悪趣味だと思うのだがあえて書いてみよう(笑)。
実は本当のアナログ盤というのは少ないのである。CDが
普及するずっと前からアナログ・アルバムのマスターテープはデジタルに移行していた。その移行時期はレコード会社により違う。そのデジタル・マスターは
16ビット/44.1kHzというCDと全く同じものだった。つまりいくらアナログ24トラックレコーダーとアナログ・ミキサーの組み合わせで音を作って
もアナログ盤をプレスするための原盤を作る段階でアナログの持っている「微妙なニュアンス」は全て切り捨てられCDと同じレベルのデジタル・オーディオになり、そ
してプレスされたのだ。
よくアナログ盤のファンは16/44.1のCDの規格では音のニュアンスが抜け落ちると主張する。では現在市場に出回っているアナログ盤のうちどれが本当のアナログ盤でどれがいったんCD基準でデジタル・オーディオに変換してからプレスしたか聞き
分けることができるのだろうか?実は、80年代私はこのテストを自分でやったことがある。いったんデジタル化されたアナログ盤は、その発売時期とレコー
ド・レーベルをチェックすればほぼわかるわからないなら業界の人に聞けば良い。
結果を言えば全く聞き分けることができなかった。ただ、これは私の耳の悪さを証明しているだけかも知れない。だが世間で言われるアナログ盤の暖かさの半分以上は「幻想」だと考える。
(最近のものはアナログ24トラックからミキシングし直しており、そうした音楽は確かに「暖かい」かも知れない)
問題はアナログかデジタルかではなく、16ビット/44.1kHzという規格が十分かどうかだと思う。現実に私は24ビット・96kHzで録音できる環境を持ちながら自分の音楽を全て16/44.1で制作している。
(今は色んな隠し技が可能だ)
い
やそうではない、アナログ盤はやはり優れていると考える方はご自分の所有されているアルバムのどれが純粋アナログ盤でどれがデジタル・マスターから作成し
たアナログ盤かを聞き分けるテストをしてほしい。恐らく、差を聞き取ることはできないだろうと私は考える。自分が聞き分けることのできない違いにこだわることにどういう意味があるのか?
アナログ盤はどうしてもノイズが出る。人間がノイズのない状態に違和感をだくというのは事実であり、ノイズが出るか
らアナログ盤は優れているという議論は可能だ。もしアナログのノイズはノイズがあるから気持ちよい、音が気持ちの良い劣化をするという主張なら私も同意で
きるかも知れない。