ハイチの絵画
2010.10.01

恐らくほとんどの方は知らないと思うが、ハイチの絵画は高い評価を受けている。NYからハイチ行きの飛行機には絵画のバイヤーが多く乗っているという。

ハイチの絵画は見たことがある。明るいブルーの空と海が印象的な絵だった。一般にカーニバル的明るさと評される。

ハ イチの絵画を最初に見出したのは多分、シュール・リアリズムの詩人アンドレ・ブルトンだろう。彼は船に2ヶ月揺られてフランスからハイチにたどり着き、 1ヶ月絵画を堪能してまたフランスに帰ったという。関係ないが日本の浮世絵を西欧で最初に評価したのもフランス印象派の画家だった。

中南米の絵画というとメキシコのシケイロス、ブラジルのマナブ・マブ(日系ブラジル人)が有名だが、そうした絵にはやはりハイチの絵に共通する明るさがあると思う。

そ して同様の明るさはコンゴの画家シェリ・サンバの作品にもある。アフリカの絵画ではタンザニア中心のティンガ・ティンガ派が比較的知られているが、ティン ガ・ティンガは新大陸の絵画とは異質だ。悪く言えば原始的だ。少なくとも、シェリ・サンバの作品には新大陸、特にハイチの絵画に通じる洗練があるように思 う。

それはもともとコンゴにあった美的センスがハイチで開花したのか、ハイチの絵画がヨーロッパ経由でコンゴに入ったのか不明だが。ここにもルンバと同じようなアフリカと新大陸の関係があると思う。

ハ イチを代表する歌手の一人、ベートバ・オバの父親も画家だった。彼は息子がベートーベンのように偉大な音楽家になるようにと願い、ベートバと名付けたとい う。ところが彼はハイチの秘密警察トントン・マクートを激しく非難したために殺害された。ベートバ・オバのYouTubeにある映像を見ていると、急に秘 密警察のシーンが表れたりする。上に書いたような背景を知っていると理由が理解できるのではないかと思う。