記事に賞味期限をつけろ
2010.10.03

(2002年頃の文章に加筆しました)

先日、知人と喫茶店で話をしたのだが、彼は90年代始めに貯金を全部、国債にして預け、昨年たんまり利息付きで満期を迎えたという。その利息の額(ほぼ元本と同じ)を聞いて私は息をのみ、「そ、そうか、良かったな」と絞り出すような声で答えたのだった。

一瞬、彼のバッグを奪いマカオに逃亡しようかと思ったが「組織」がサーズで壊滅状態にあることを思いだし、私は青ざめたまま冷めたコーヒーを飲み干したのだった。

ところで90年代、私はどうしていたかというとマネー・ジャパンや日経マネーという雑誌の言うがままに短期の銀行預金になけなしの金を預け、預けかえるごとに金利を下げていくという実に玄人好みの「資産運用」をしていたのだった。

と ころで今の金利は低いから銀行預金は短期にしろとうるさいほど主張していた新聞のマネー・コラムやマネー雑誌に責任はないのだろうか?今、振り返れば彼ら の主張が全く間違っていたことは小学生でもわかる。雪印事件を思い出してほしい。あの事件では賞味期限や製造物責任が厳しく問われた。何故マスコミの記事 は間違っていても責任を問われないのだろう?

もちろん言論の自由は重要だ。私も尊重している。だがバブル崩壊からもう15年近いのだ、そろそろ過去のメディアの報道は正しかったのか検証を始めても良いだろう。そして間違っていたなら謝るくらいの誠意を見せて欲しいものだ。

第一、金利を決定するのは日銀であり、マネー雑誌でもメディアでもない。なら、90年代の記事はこうあるべきだった。

「こ れから金利が下がるのではないかという意見が根強くささやかれており、我々はそうした意見を必ずしも否定するものではないが、金利を決定するのはあくまで 日銀であり、我々の意見には何の重みもない。だが、経済指標の趨勢を鑑みるととりあえず短期の預金にした方が良いのではないかという意見を我々は否定する ものではなく諸情勢をご勘案の上、あくまで個人の責任において決定されるのがよろしいのではないか」

(賞味期限:2001年12月25日)

追記

最初に書いたのは実話です。90年代、メディアに惑わされず愚直に日本国債を保有したものが最も資産を増やしたのです。