人間の耳の限界
2010.10.04

(2002年頃に書いた文章。今でも内容は十分に新鮮だと思う)

最近は24ビット/96kHzオーディオが一般化してきた。だが人間の耳は20kHzをこえる音を聞くことはできない。これは人間の耳の限界だから訓練してもどうすることもできない。アナログ音をデジタルに変換する時の基本的なコンセプトは高速フーリエ変換である。

その考えに基づけば20Khzの2倍以上である44.1kHzでサンプリングしているCDの音質は必要にして十分なはずだが現実には、それより高い周波数でサンプリングした音との「違い」が聞き取れたりする。こちらの人間の耳の限界に関しては膨大な意見がすでにある。

私がこの文章で問題にしたいのは人間の耳はどのくらいのタイミング誤差を聞き取ることができるかである。これに関しては10万分の1秒まで聞き取れるという説がある。そんな、馬鹿なと思われるかも知れない。そこでが2つ具体的な例を紹介したい。

イ ギリスにサウンド・オン・サウンドという録音テクノロジー雑誌がある。雑誌SOSはエコーという会社の製造したGINAというサウンドカードをレビューし これを絶賛した。それを読んだあるスタジオ・オーナーは早速GINAを買いこみ、GINA経由でPCでのマスタリングを行った。ところが常連のクライアン トが、「今回のミックスはいつものに比べてパンチがない」と苦情をつけてきた。驚いたスタジオ側はそのミックスをPCのソフトに読みこみ波形単位で調べた ら、ステレオの右と左で1サンプルずれていることがわかった。怒った彼らはこのGINAを激賞したサウンド・オン・サウンドに公開で苦情を送りつけた。 SOS側が色々、「防戦」に努めた。

GINAの初期ドライバーのバグだったらしく、すぐに新しいドライバーが出て大きな問題にならずにす んだ。しかし世の中には1サンプルのずれを聞き取れる人がいるのである。44.1Khzの場合、1秒を44100で割るわけだから0.0000226秒の ずれである。ここまで人間は聞き取ることができるのだ。

こうしたケースは特殊な例外ではない。マッキーのデジタル・ミキサーd8bにおいても初期に同様なバグがあった。それに気づき怒ったユーザーがwww.mymackiesucks.comというのを作りネット上でマッキーを告発していた。

しかしこうした1サンプルのずれは結局、サンプリング周波数単位でのズレに等しい。そう考えると96kHzオーディオにも十分な意味があることになる。

残念ながら私は10万分の1秒のズレを聞き取るような耳を持っていないので、これ以上書きようがない。