命をかけた恋(ただし現金払い)
2010.10.05

(2002年の文章に加筆しました)

コンゴには様々な病気がある。当時の日本大使館員の話によると、「世界の伝染病でコンゴにないものはないが、コンゴにしかない伝染病はたくさんある」とのことだった。

ところで私がキンシャサに行った頃はエイズはまだ謎の病気であり蚊に刺されてうつることもあると信じられていた。実際、キンシャサのライブハウスなどで無数に蚊にさされたのだが、あまりいい気持ちはしなかった。

エ イズは当時、話題の病気だった。日本に帰ると世間の目は非常に冷たかった。「よく生きて帰ったな」とか「ライオンに襲われなかったか」などと言われた。そ の内に「病気はもう直ったか?」などと毎朝、挨拶されるようになった。さすがに温厚な私も切れてしまい「一晩、寝たらすっかり直りました」とか「正露丸が 効きました」などと適当に答えるようになった。だが疑惑はけっして晴れることはなかったのだ。

ところで過去の文章で、リオの国際空港で偶 然ひろった日本人相棒のことを書いた。彼はプロ・アマを問わない大変なプレーボーイ/女性好きであった。最初の外国であるケニアに行った時にモンバサとい う海岸リゾートで恋の冒険の数々(ただし現金払い)をしたらしい。ところが彼が日本に帰って最初に広げた新聞に「ケニアのその筋の女性は半分以上がHIV 陽性である」と書いてあった。その男は「オレはもう死んだな」と考え医療機関でエイズ・チェックを受けたら何故か陰性だった。彼は明るい声で「めちゃラッ キーでした」といった。

リオでも全く懲りずにガール・ハントに連夜、繰り出した。ある日、パケタ島(リオ郊外にある観光名所)に明日「み んな」といくのだが男がたりない、オマエ来ないかとお誘いがあった。しかしリオでもこの病気が非常に流行っているのを私は知っていたので丁重にお断りし た。彼は野村證券に就職する予定だと言っていたが、今まだ生きているのだろうか?はなはだ疑問に思うのだった。
 
(当時、エイズ罹患率が一番高い都市がリオ・デ・ジャネイロだったと記憶している)

 ピース&ラブ