私のギターが下手な訳
2010.12.23

昨 日、新曲「ジプシー達の踊り」をアップした。フィドルとの対比で自分の演奏の下手さが目立った。実はこの曲は8年ほど前に書いたRumba na Biso(ルンバ・ナ・ビソ、我々のルンバ=コンゴ音楽のこと。ミジキ・ナ・ビソとも言う)という曲をアレンジしなおしたものだ。この頃、ある事件があっ た。

当時、すでにスーパーへの買い物は全て私がやっていた。ある冬の日、自転車でスーパーに向かっていたら前の車が無茶な方向転換をした ために私は横転し激しく体を打った。車から出てきたのは70歳前後の男であった。彼は大丈夫ですかと聞いた。だが全身を打ったために大丈夫かどうかわから なかった。続いて車から出てきたのは90歳前後の老女だった。彼女は私に「アンタはどうして道路に寝ているのか?」と訊いた。冬の寒い中、アスファルトの 上に寝る訳ないだろ、ホームレスだって段ボールくらいかぶると言い返そうと思ったが、老女は明らかに呆けており、言うだけ無駄なのがすぐにわかった。

私 は男が無茶な方向転換をした理由がわかったので彼の名前と連絡先だけをメモに書かせて放免した。私は時々、こういう優しさを見せて手痛い目に遭う。この時 も例外では無かった。次の日から左手の小指と薬指が痛み出し、1週間もすると指が動かなくなった。左手が正常に戻るまで2年間、楽器練習が不可能になっ た。ただ、その間、何も音楽活動をしなかった訳ではなく、ジャズ的なリハーモナイゼーションとか右手の指1本だけによるメロディー演奏/作曲をしていた。 今、このサイトにのせているジャズ君が代とかは、その頃の名残りである。

しかしである、ジプシー・ジャズの巨人(読売新聞とは関係な い)、ジャンゴ・ラインハルトは小さい頃の火事で左手の中指、薬指、小指がくっついてしまった。彼はギター・ネックの反対側から親指を回して弦を押さえる という技をあみだし、親指、人差し指、その他の3本で超絶的な演奏をした。

それを言うなら、ジャズ・トランペット奏者のチェット・ベー カーも麻薬売人に押さえつけられて歯を全てペンチで抜かれた後もヨーロッパに活動拠点を移し平然と演奏を続けた。アンブシュア(唇の形)を重視する楽器 (トランペットやフルートなど)を練習したかたなら理解できると思うが普通、歯がおかしくなると演奏ができなくなる。チェットの場合、全部の歯を抜かれ総 入れ歯になったのがかえって良かったらしく、歯が無くなってから、かえってうまくなったと私は思う。

という訳で、言い訳にしかならないの だが何故、私のギターがド下手なのか、その割には小難しい理屈をこねるのか、理由が理解していただけたかも知れない。最初に書いた交通事故は私のでっち上 げではない。当時のサイト付属掲示板で「事故にあって左指が動かなくなりました」ときちんと報告していたからだ。

人生において、ちょっとした優しさが命取りになるんですよ・・・・・・