Call売りが危険な理由
2010.12.23

久しぶりにオプション・デリバティブ関連の文章を書いてみよう。

Call 売りがPut売りより危険であるというのは多くのトレーダーが経験則として知っているが何故、危険なのかはこれまで説明されなかった。誰も合理的な説明が できなかった。あえてこの文章で解説を試みる。なお自分の主張が正しいとは言ってませんので注意してください。あくまで仮説です。

年金をはじめ多くの機関投資家が現物株を保有している、これは事実である。この現物株保有のヘッジとして従来はPut買いが挙げられていたが、ここではCall売りを行っていると仮定する。つまり本来の意味でのカバード・コールである。

A 機関が保有する株式が10Δであると仮定する。この場合、A機関はOTMのCallを1−2Δ程度、売ってもかまわないだろう。何故なら、OTMの CallがATMになるまで原資産が上昇しても、元々、原資産を保有しているのだから、全体ではプラスになる。つまりCallを損切りしても原資産の上昇 でおつりがくる。年金がそうしたカバード・コールをやるとは思えないが、機関投資家も様々であり、中にはCall売りで保有現物株のヘッジをしているとこ ろもあるだろう。

我々はマーケット・メーカー(MM)がオプションの売りを出していると考えがちだが、もし機関投資家が継続してCall 売りを出しているならマーケット・メーカーはCallサイドでは何もしないだろう。何故なら彼らは市場に流動性を供給するためにMMに選ばれているのだか ら。この仮定が事実であるならMMはCallでは中立、Putでは売り板を出して市場に流動性を供給していることになる。つまりMMの視点から見ると原資 産の上昇は常に望ましいことになる。

この考え方は実勢にあっている。ここ数ヶ月、日経平均は大きく上昇したがCallの価格(プレミア ム)は常に理論価格の50%前後であり、Putの価格は理論価格の倍から10倍だった。何故、そうなるのかを考えた場合、機関投資家がカバード・コールを やっている以外の理由が見つからない。

つまり

Callの売り手:機関投資家        Callの買い手:MM(?)
Putの売り手:MM                Putの買い手:機関投資家

となる。機関投資家がCallを売るのは無問題である。何故なら彼らは原資産を保有しているからだ。だがオプ・トレーダー(投機家)がCallを売るのは明らかに危険だ。何故なら彼らは原資産を保有せずに、理論価格の半分の値段しかないCallを売っているからだ。

この機関投資家がカバード・コールをやっているというのはただの仮定だが、そう考えると何故、暴落時にコールの値段(IV)があがるのかも説明できる。

暴落した時の行動として

機関投資家: Put成り買い(保有する現物株のヘッジ)
MM: Put成り買い(在庫として保有しているPut売りを返済するため)
機関投資家: Call返済買い(Put買いの資金を作り出すため)
MM: 何もしない(Callサイドでは在庫が少ないため)

私 の仮定ではCallサイドでマーケット・メーカーは買い手かどうか不明だが少なくとも売り手ではない。売り手は機関投資家である。そして暴落時に機関投資 家はヘッジのCall売りを手じまってPut買いの資金にあてたいと考える。だがMMは元々、Call売りの在庫を持っていないためにCallサイドで流 動性供給をしない。そう考えるとCallサイドで買い>>売りとなり、Callの値段(IV)が上昇する。需要と供給の帰結。

私はこれが真相ではないかと思う。つまり現物株を保有する機関投資家がカバード・コールとしてCallを売るためにCallの値段は常に不当に安い。不当に安いものを売る馬鹿(=個人投機家)がいるために彼らは時として大損をする。

この私の仮定が正しいならCallを売るのは馬鹿げておりPutサイドだけで取引をしたほうが良いことになる。逆にCallは常識に反して買うべきだとなるのだが・・・・