全ての道は丸暗記から始まる
2011.01.01

鳥飼久美子という英語のプロがいる。昔は同時通訳者、今は大学教授をやれらているようだ。残念ながら会ったことはないが彼女がサイマルの同時通訳をやっていた事、私もサイマルから翻訳の仕事をもらっていたことから何となく親近感を持っている。

鳥飼さんが昔、英語をマスターするには高校の教科書で十分だ、後はスラングと時事用語を覚えるだけで良いと書かれてた。実は私も高校の教科書だけで英語の勉強をしたので「へー、鳥飼さんもそう考えているのか」と驚いた事がありました。

私 はどういう英語の勉強をしたか?丸暗記です。高校に入った時に英語の教科書を渡されます。最初にあるのは中間試験なので、この出題範囲であるLesson  1-6を音読して教科書が無くても暗誦できるようにしたのです。次は期末試験ですが、この時に前の部分も忘れないように音読したのです。つまり Lesson 1−12までを全部、暗誦できるまで丸暗記したのです。驚いたことに高校1年の終わりには英語の教科書1冊を始めから終わりまで朗読できる ようになりました。これを高校2年まで続けていたら、ある日から洋書を読むことに抵抗感が無くなり、そこからは楽しみながら英語の勉強ができたのです。

英 語に関しては色んな人が色んな事を言ってます。これは国家破産と同じように英語ビジネスですから高校の教科書を真面目に勉強すれば十分とは言えない事情が ある訳です。ですが鳥飼久美子さんが言われているように高校の教科書で十分なのです。後は馬鹿になって丸暗記することができるかどうかです。別に文科から お金はもらってません。くれるというなら受け取りますが(笑)。

私がこのサイトで書いてる英語ネタで2chにスレが立ったようです。失望 させるようで申し訳ありませんが必要なのは高校の教科書を丸暗記する、これだけです。しかし人間はなかなか馬鹿になって教科書を丸暗記するのができないん ですよ。だから日本人の英語はちっとも向上しないのです。要するに小賢しいのです。

そこで思い出すのがユーモアのセンスです。昔、私がこ のサイトで書いてる文章をユーモア、エスプリ、サタイアに満ちていて素晴らしいとほめてくれた人がいました。これは正直、嬉しかったのです。何故かという と私は英語の勉強と同じくらいの時間と労力をユーモアのセンスを磨くのにかけたからです。

どうやってユーモアのセンスを磨くか?丸暗記です。とりあえず桂米朝落語全集を毎日、聴いて全ての「フレーズ」を覚えました。そこからアート・バックウォルトのようなアメリカン・ユーモアに移り、さらにP.G.ウッドハウスのような英国ユーモアに移ったのです。

こ れはひたすらフレーズを覚えて、それをどういう場面で使うかの練習をするだけです。残念な話ですが今の私のユーモアは全盛期の1/10程度に落ちていま す。記憶力が落ちてますから。全盛期は30代前半だったのですが、この頃の私のユーモア/笑いは本当にすごかった。自分で言うのも変ですが(笑)。

あ る日、会社のハイヤーで広告主である河合塾に向かっていたら運転手が笑い出してしまい「お客さん、朝日新聞においとくのはもったいない。今から大須演芸場 に回しましょうか」と言われたこともある。この時は「まだ事務所が決まってない」と言って断った。別の時は酔っぱらってタクシーに乗ったら運転手が会話を きいてゲラゲラ笑った。そこで私は運転手に「客の会話を聞いて笑うのは失礼だ。これから笑ったらタクシー代チャラですよ」と言ったのだが運転手の我慢は5 分と持たなかった(タクシー料金はきちんと払った)。この頃の私のユーモアならタモリに勝てたと思う。当時の芸には何かのキーワードをきっかけにアドリブ 落語を始める、TVに映っているアナウンサー相手に即興のニュース解説をするとかがあった。

(ちなみに社内食堂での私の馬鹿話を聞いた編集局長が怒って広告局長に竹本を厳重注意しろと通告した。これは本当の話である。)

だ が、そのユーモアのセンスは丸暗記と果てしない試行錯誤と練習の成果なのだ。時々、日本人にはユーモア感覚が欠けていると民族性に理由を求める人がいる。 そうじゃないのだ、ユーモアのセンスは果てしない丸暗記と試行錯誤によりはじめて身に付くのだ。丸暗記しないと何も始まらないのだ・・・

だが丸暗記してもどれだけ努力しても日本人はユーモアのセンスを評価してくれないのも事実だ。