小黒一正の小賢しい「国家破産論」
2011.01.11

(こ こでは小黒一正氏への個人攻撃を行っています。小黒氏に反論があるなら、このサイトに全文掲載しますので竹本秀之、wx7gye3@c- able.ne.jpに反論を送ってください。あるいは電話ないしは郵便でもお好きなように。なお、この文章の著作権を放棄しパブリック・ドメインにおき ます。事前通告無しで自由に引用、転載してください)

小黒一正という人がいる。『2020年、日本が破綻する日』(日経出版)『世代間格 差ってなんだ?』(PHP)など著書多数だそうで、恐らく池田信夫氏と同じく第3海援隊に所属しているのだろう。あるいは第2海援隊別働隊とか(笑)。こ の人に関して言えるのは池田信夫氏と同じく知的誠実さが全く無い点だ。

過去、15年以上に渡り無数の日本の国家破産論が出されてきた。新 しい国家破産論を唱えるのは憲法が保障する言論の自由だ。だが言論の自由には当然ながら言論への責任が問われる。何故、小黒氏は過去の無数の国家破産論が 間違っていた理由を1つ1つ説明した上で何故、今回の自分の主張は過去の国家破産論と異なり、正しいのかを説明する義務があると私は考える。だが小黒氏は そうした説明を行っていない。そこに知的誠実さのかけらもない。

小黒氏のTwitterから引用:
(最も欺瞞的な部分のみ)

http://twitter.com/DeficitGamble

ア リに対する課税(インフレ税)ですね。それは、説明が難しいですが、政府通貨発行での返済は事実上「財政破綻」とみなせると思います。(続く) @souteigai7 アリの債権と政府の負債を政府通貨を発行することによって解消…もしそうであれば財政破綻することは絶対にないはずです。 30分前 webから

引用終わり

蟻に対する課税ということはインフレで最も苦しむのは庶民と考えておられるのだろう。これは蟻(庶民)は資産における現金保有比率が高いためにインフレに対し富裕層より資産の目減り(depreciation)が大きいという「事実」を根拠としている。

と いうことは逆の命題として「デフレは庶民に優しく富裕層に厳しい」が言えるはずだ。これは事実だろうか?バブル崩壊後の日本のデフレ不況が年金生活を送る 団塊の世代に優しかったのは事実だ。その結果として我々は鳩山、菅という日本の歴史に残る「偉大な宰相」を持つはめになった。他方で、デフレが富裕層に厳 しく働いたという証拠は私の知る限りどこにも無い。何故なら富裕層はデフレ下においても資産を増大させる「錬金術」を持っていたからだ。具体的に説明す る:

富裕層のポートフォリオにおいてインフレに強い株式の比率が高いと仮定する。彼らはバブル崩壊後のデフレ不況で損をしただろうか?私は正反対で大きな利益を得たと考える。その論理は以下の通りである。

1.A資産家が保有する株式の合計Δが10と仮定する

2.この時、A資産家はCallを安全に売る事ができる

(ATMのCallを10枚売るとする。このATMのCall売りはどれだけ原資産が上昇しても10Δ以上にならない。他方、現物保有株は常に10Δあるのだから、どれだけ原資産が上昇しても必ず利益が出る。何故なら時間的価値が減少するからだ。

他 方で、原資産は年率10%の下落を想定しているので、そこでの月あたりの損益は(原資産購入価格×0.1)÷12である。ATMのCall売り10枚は失 効する=全部利益になる。年率10%の下落は日経平均3.6万が10年で1.129万になることを意味する。これは、ほぼ実勢にあった仮定だ。

A資産家が経済的合理性に基づいて行動するなら絶対にATMのCallを売る。何故なら売っても損は出ないからだ。Callを売らないという選択も可能だが、その場合A資産家は経済的合理性に基づいて行動してないので経済学の対象外と見なしてもよいだろう)

3.これは完璧にリスク・フリーなCall売りだ

4.何故かというと原資産である株式を保有した上でCallを売っているからだ

5.このCall売りが月に1%のリターンをもたらすと仮定する(普通にありうる仮定)

6.ここで株式が年率で10%下落し続けたと仮定する

7.それは毎月1%のCall売りによる確実なリスク・フリーなリターンをもたらす

8.それ(Call売り)を年率に換算すると12.68%のリターンとなる

9.従ってA資産家は株式下落局面で原資産である株式を保有していても、下落を上回るリターンをえることができる(12.68-10=2.68%、年換算2.8%の利回り)

10.ここに株式配当と株主優待を含めるならA資産家の株式年間利回りは5%以上と思われる

11.株式が年間10%の下落を続けてもA資産家の資産は増え続ける。ここでデフレ率を4%固定と仮定する

12.この場合、蟻(庶民)の実質資産は年間4%増えるだろうか?絶対、増えない。何故なら給与が下がるからだ(賃金の下方硬直性は無いと仮定)。他方でA資産家の資産はデフレ率をこえて増大する

13.結果としてデフレが進めば進むほど資産家はよりリッチになり蟻(庶民)はますます貧乏になる=格差増大

英 語でもInflation Taxという言葉はあるから小黒氏の主張を完璧な詭弁とは言えない。だが、税金にはその根拠となる法令が必ず存在する。小黒氏の主張する蟻に厳しいインフ レ税の法的な根拠=具体的な法令は何か?法的な根拠が存在しないなら、単に負担の増大(burden increase)あるいは資産の目減り(asset depreciation)と言えば良い。その解決法は、所得再分配の徹底である。

小黒氏は小難しい理屈をならべているが、この程度の簡単な経済原理も理解できないのだろうか?理解できないなら、それはそれで構わないので本を出して偉そうな説教をするなと私は言いたい。

参考

引用

http://en.wikipedia.org/wiki/Inflation_tax

An inflation tax is the economic disadvantage suffered by a holder of cash and cash equivalents in one denomination of currency due to the effects of expansionary monetary policy, which acts as a hidden tax that subtracts value from those assets. Many economists hold that the inflation tax affects the lower and middle classes more than the rich, as they hold a larger fraction of their income in cash, they are much less likely to receive the newly created monies before the market has adjusted with inflated prices, and more often have fixed incomes, wages or pensions. Some argue that inflation is a regressive consumption tax. [1]

引用終わり

追記

恐 らく、小黒氏の主張は経済主体が合理性に基づいて行動しない世界を想定していると思われる。しかし経済主体が経済的合理性に基づいて行動しない世界を論じ るのは果たして経済学者の仕事なのだろうか?カタストロフィー経済学を説かれるなら、何故、JGBにおいてのみカタストロフィーがおきるのかを誰もが納得 できる形で説明していただきたい。

何故ならアナタ達は徒に国民の不安を煽っているからだ。

追記2

下の主張は盗人猛々しいとしか言いようがない。要するに国家破産論に反駁する者に対し、破産しない根拠を示せと言ってるのだ。

ま ず指摘しなければいけないのは国家破産論者、財政破綻論者がvocal majorityである点だ。noisyと言っても良い。新聞を読んでもTVを見ても本屋にいっても国家破産 論のほうが圧倒的に多い。しかし十数年、日本の財政破綻が主張されながら、その気配が現在、見えないとsilent(queit) minorityが長期金利の低下と いう事実を引用して声を上げることの何が間違っているのか?

silent minorityを否定したいなら、まず何故、これまで無数に唱えられてきた国家破産論が間違っていたかを1つ1つ具体的なデータを挙げて検証した上で、今回の自分の主張は過去の主張と異なり、信じられる根拠を挙げるべきだ。

国家破産、財政破綻と国民の不安を煽るだけ煽りながら、その責任を一切とらず、長期金利の低下という事実を挙げて財政破綻を疑問視する小さな声を押しつぶそうとする姿勢のどこに知的誠実さがあるのか?

http://agora-web.jp/archives/1186862.html

国民をミスリードする「財政破綻しない論」 −井上悦義アゴラ編集部