ブロック紙と日本の左傾化
2011.04.09

ま ずお断りをしなければいけないが私は別にマスコミ研究をしてきた訳ではない。ただ新聞社で10年働いた中で自然と業界の情報は入ってきた。また社内研修な どで業界の現状解説が行われた。意外に役に立ったのが労組での集会である。労組は「労働者は平等である」という建前で運営されているので、労組の集会でベ テラン記者などと話をして聞き出した情報もある。だが決して体系的な知識ではない。

私が朝日にいた頃、朝日も読売も共同通信に加盟してい た。だが朝日も読売も十分な支局網を持っているので共同配信のニュースは必要なかった。いやいや、外報で共同の記事を使うのだと主張されるかたがいるが、 朝日は朝日でロイターやAP通信などと契約をしていたと思う。外報部もあった。つまり、どう考えても共同通信に加盟し加盟料を払う理由が無いのだ。

そ う思ったのは私だけでは無かった。何故なら朝日や読売が共同通信と完全に縁を切っていた時期があるからだ。それが何故か、いつのまにか共同に再加盟するこ とになった。あくまで推測でしかないのだが電通の圧力があったのではないかと思う。何故なら共同通信と電通は双子の兄弟だからだ。例えば47clubとい う地方新聞社をあつめた通販サイトを作ったのは電通だ。一方で共同通信のネットでのニュースは47Newsと呼ばれている。

恐らく社内研 修で見たのだと思うが、共同通信の経営を支えているのはブロック紙である。具体的には中日新聞(東京新聞もここに入る)、北海道新聞、西日本新聞の3紙で ある。私が見たグラフだと共同通信の収益の半分以上が上の3社からの加盟料だった(加盟料は公表されてないが、部数などを換算して決められる)。

2ch ではよく話題になるのだが、中日新聞、北海道新聞(道新)、西日本新聞はある意味では朝日より左寄りの編集方針を取っている。西日本新聞に関してはよくわ からない部分があるが、中日新聞、北海道新聞に関してはこの傾向ははっきりしている。そして民主党が強い地域でもある。

当然の疑問として 「何故、中日新聞や北海道新聞はそれほど左よりの記事を掲載するのか」というのが思い浮かぶ。これは彼らが地域における独占媒体に近いために「記者の本 音」が出るのではないかと私は疑っている。では何故、中日新聞や北海道新聞と言った地域独占型ブロック紙が生まれたのか?

これを説明する ためには戦時中まで遡らなければいけない。戦争中−末期において紙資源が不足した。そのために1県1紙という制度が強制された。例外だったのは東京と大阪 だけだ。つまり、ある時点まで朝日や毎日は東海地方でそこそこのシェアを持っていたのだが、政府の方針によりシェアを全て中日新聞に奪われた。今はもちろ ん朝日も読売も毎日も東海地方で新聞発行をしているのだがシェアを挽回できていない。

東電を見ればわかるが地域独占媒体は圧倒的に強い。その強い経営地盤の上で、朝日新聞論説委員も青ざめるような「過激な論調」が展開された。何しろ読者が逃げないのだから何を書いても無問題だ。

そして共同通信もまた相当に「過激」だ。時事通信は共同通信の「いとこ」にあたるのだが、時事通信のほうがはるかにバランスが取れている。メイン加盟社である中日や北海道新聞が過激だから共同が過激になるのか、その反対なのかはわからない。

というわけで地域独占の弊害は東電だけではない。メディアの世界にも残っている。それは戦時中の一時的な措置の残滓に過ぎないのだが延々と今も残っている。だがメディアの独占や寡占を論じることはメディアにより禁じられているので私のような馬鹿以外はめったに指摘しない。

残念な話だ。

追記

少しわかりにくいので補足すると、朝日や読売は本音では共同通信を必要としてないのだが、共同通信の双子の兄弟である電通が「強く勧めるために」共同を利用しているのではないかと私は考えるのだ。結果として、全国紙の犠牲の上に地方紙の「自由な論調」が成り立っている。