記憶の断片をひろいあげる
2011.04.21

部屋の整理をしていたら昔、書いた2つの短編が出てきた。確か1995年頃に書いたものだ。完成させたかどうかは不明だ。何故なら当時は自分のサイトを持っておらず発表の場が無かったからだ。

1 つは人類(ホモ・サピエンス)より100倍、頭が良い新人類が現れて、ホモ・サピエンスは絶滅寸前になるというものだ。何故なら新人類から見ると、ホモ・ サピエンスの知能は犬や猫と変わらないために邪魔物として「除去」されたからだ。生き残ったホモ・サピエンスが森のなかに潜み、反撃を企てるのだが、新人 類の圧倒的な知性と能力の前に無残に敗れ去るという内容だった。

実は、この小説の隠れたテーマは日本の捕鯨だった。グリーンピースのよう な「環境保護団体」は鯨やイルカは知能が高いから殺してはいけないと言う。ならば人類より遙かに頭が良い新人類が現れてホモサピエンス狩りを始めても文句 は言えないねというテーマだった。この小説は結局、発表されずに終わった。2002年頃なら自分のサイトで発表したのだが。

もう1つの小 説もSF的なものだ。というか、これは誰かが既に書いてたような気がする。星新一か眉村卓か、どちらかのアイディアだと思う。こちらはどういうプロットか というと、非常に悲惨で耐え難いほど残酷な事件(民族虐殺など)が続いた後に神ないしは仏が現れて人類に提案をするというものだ。

この提 案内容は、従来型の全く予測できない死を選ぶか、神の手により何ら苦痛なくこの世から消え去るかを選べというものだった。で、後者を選んだ男が休日、家族 とともに朝ご飯を食べている時に神の使いが現れ、「死」を通告する。男は激しく動揺するのだが本来であれば、その日に交通事故で脳死におちいる予定だった ことを知る。そして妻と子供が見守る前で彼の体はだんだん透き通っていき、やがて形跡もなくなるという非常に救いのない小説だった。こちらもやはり発表し なかった。自分のオリジナルかどうか不明だったからだ。

レベルはともかくとして私のように昔から色んな創作活動をしていると時々、思わぬ 「作品」が現れる。最大の宝はもちろん20年近く前から延々と書きためたメロディーだ。というか実態としてはカセットテープに吹き込まれた自分の鼻歌に過 ぎないのだが、20年も経過すると他人の作品同然であり、新鮮で面白い。当時、全く発表の場が無いのに何を考えてメロディー/鼻歌を延々と録音し残したの かは不明だが、このカセットがあるおかげで少なくともオリジナル・メロディーのネタに困らないのは事実だ。そうしたメロディーの断片は今、このサイトにお いているmp3のあちこちに現れている。

そうした段ボールに詰められたカセットを見るとき、利用価値がわからなくても取りあえず保存して おくというのは重要だなと思う。一杯のコーヒーで全ての記憶がよみがえるというのは現実にはありえない。自分が考える馬鹿げた日々の発想にどれだけの価値 があるかは死ぬまでわからないと私は思うのだ。


追記

よく考えてみれば、この発想は検索エンジン/広告会社であるグーグルの発想だったりする。