TVが進める社会の疑心暗鬼
2011.04.25

何 か凶悪犯罪があると必ず近所の人のコメントが流れる。「Aさんはいつも明るく挨拶をする真面目な人だったのに」とか「会っても挨拶もしないいつもうつむき 顔の暗い人だった」と言うコメントがTVキャスターにより読まれる。しかし、明るく挨拶をする人もしない人も凶悪犯罪を犯すなら、結局、挨拶をするかどう かは凶悪犯罪と関係ないという主張も可能だ。

視聴者にして見れば毎日のように凶悪犯罪のニュースを聴かされると、もはや年齢や性別、しつけなどに関係なく今の日本では凶悪犯罪が日々おきている、全ての人が潜在的犯罪者と考えるようになる。大きな疑心暗鬼がおきる。

し かし挨拶をするかどうかと凶悪犯罪を犯すかどうかの間に何ら因果関係も相関関係も無いとすれば、TVニュースは不必要に日本社会の不安を煽っていることに なる。では何故、TVはそうした因果関係があるか無いかわからないことを報道するかというとニュースがワイドショーになっているからだ。バラエティーに なっているからだ。

大体、日々ものすごい量の報道すべき事柄がおきており、中には数時間かけて背景を説明しなければ理解できないものもあ る。本来、ニュースというのはけっして面白いものではないのだ。面白くなくても国民の電波を不当に安く借りているTV局は、それなりの時間を取り、流すべ きニュースを全て流すのが義務のはずだ。

実際、昔のニュースは退屈だった。それがニュース・キャスターにより面白おかしく脚色されるよう になった。そうした傾向を始めたのはアメリカだろう。既に亡くなられたがウォルター・クロンカイトという有名なキャスターがいた。この人の生番組を大昔、 何度か見たことがある。この人の頃はまだ広い見識のある人がニュースを解説するという姿勢だった。だが古館などはもともとプロレス実況のアナウンサーだっ た。そういう人に見識が期待できる訳が無く、結局、チームで仕事をし、キャスターはシナリオの読み上げ役者になってしまった。

では何故、 ニュースのワイド・ショー化が進むかというとこれは簡単で、ワイド・ショーにしたほうが視聴率が取れるからだ。視聴率がアップすればTV局も喜ぶが、一番 喜ぶのはTVのCMに大きな力を持つ電通だろう。何故ならCM市場のパイそのものが大きくなるからだ。つまりニュースのワイドショー化が進めば進むほど電 通の利益が上がることになる。

今、東電の独占体質と隠蔽体質が問題になっている。だが、東電を問題視するなら当然ながら電通の問題を避け て通ることはできないと私は考える。残念ながら電通は大きなタブーになっており私のような馬鹿を除いて誰も正面切って問題にしない。電通が社員としてかか える人質と呼ばれる膨大な数の政治家、官僚、企業役員などの子息を考慮すると、誰も電通の体質を変えることができないだろう。

現時点では、これはただの事実である。