情報における裁定取引
2011.06.12

最初にお断りしておくが、ここで書かれている内容は別に新しくない。ただ従来の説明より簡潔でわかりやすい説明だと思う。簡潔でわかりやすい説明は良い説明である。

ま ず裁定取引とは何か?1物2価になっているときに高いほうを売り安いほうを買うことで、その差額をリスク無しに入手する取引だ。1970年代の日本株式市 場でもあったという。当時は関西系企業は大阪証券取引所(大証)での取引が多かった。大証で大口の注文が出た場合、同じ企業の株価が東証と大証で異なる状 態が5分程度続くことが普通にあったという。本当の話である。

誰でもできる裁定取引もある。ここではサラダ油定価300円が、スーパーの特売 で180円で売られていたとしよう。ここで私が頑張って並んで20本仕入れたとする。私が住んでるところは高齢化が進んでいるド田舎なので年寄り向けのミ ニ・スーパーがある。そうしたお店ではサラダ油をほぼ定価で売っている。何故なら、足腰が弱り遠出ができない老人が定価でも買うからだ。このお店の店主に 頼んで私が1本180円で買ったサラダ油を250円で売りつけることができれば裁定取引完了である。状況さえ整っていれば、サラダ油を1本180円で20 本買った時点で、すでに利益が確定しているのだ。同じ地域において同じサラダ油が異なる価格で売られているから裁定が可能になる。

引用

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%B7%E3%83%
A3%E3%83%A0%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87

グレシャムの法則

たとえば、金の含有量の多い金貨と少ない金貨の二種類が、同じ額面で同時に流通したとする。この二種類には、通貨としての価値は同じでも貴金属としての価値は違うという、二重の価値が生じる。仮に、貴金属としての価値の高い方を良貨、低い方を悪貨と呼ぶ。

す ると、人々は良貨を手元に置いておき、日々の支払いには悪貨を用いる傾向が生じる。貨幣を用いるとはその貨幣を手放すということであり、貴金属としての価 値の高い良貨は手放したくなくなり、日々の支払いには貴金属としての価値の低い悪貨で間に合わせておこうと考えるからである

引用終わり

上 記説明は信じがたい。金貨Aの金含有量が70%で金貨Bの含有量が60%であるとする。私はwiki説明のような心理学ではなく金含有 量の高い金貨Aを売り、含有量の低い金貨Bを買うことで差額分の金価値をリスク無しで手に入れる裁定取引がおきるから金貨Aは全て金貨Bに換えられ流通し なくなると考える。ここでの裁定業者は両替商だろう。

ここまでがイントロである。私の主張は、貨幣における金含有量を情報における真実含有量にかえても、やはり裁定取引がおきるために悪い情報が良い情報を駆逐するというものだ。

じゃ あオマエ、真実を定義してみろと言われるかも知れない。これは定義不可能だ。ここでは個人による誠実な事実説明(体験など)を情報における真実と仮定す る。例えば、利益を度外視して日々、更新されているブログの内容には多くの真実があると私は考える。だが個人の情報発信力は限られているために、そうした 真実を多く含む情報は利益をもたらさない。一方で新聞やTVなどの既存メディア記者が、そうしたブログの文章にヒントをえて記事を書くないしは番組を制作 したとする。この時、元のブログをそのまま引用したのでは著作権侵害になるので、固有名詞などが曖昧にされ、一般論として報道される。何故なら一般論とし て報道することでより大きな読者や視聴者の反応が期待できるからだ。

この読者や視聴者向けに一般化する過程で情報に含まれる真実含有度が 落ちる。何故なら、ブログ主は自分の体験とか見識の裏づけの上で、自分のブログ記事を書いている。そうしてないブログも多いかも知れないが、ここではして いると仮定する。もし、それが全て体験談なら真実含有度は非常に高いと言えるだろう。だがTV局や新聞社は別に真実を伝えることを使命とはしてない。最低 限の情報が記者クラブ経由で「発表物」(官庁発表、警察発表など)として入ってくるのに「冒険」をする理由がないからだ。発表物は新聞記事の70-80%程度といわれる。例えブログ 記事に「インスパイア」されたとしても情報は加工され大衆に受けるように一般化と細部切捨てと誇張が行われる。何故なら、そうしたほうが読者や視聴者に受 けるからだ。

TVや新聞経由で情報を仕入れる人は、現時点でもネットより多い。結果として、ブログ主の体験談という真実含有度の高い情報 よりTVや新聞が載せる真実含有度の低い情報のほうが社会で広まる。つまり悪貨(真実含有度の低い情報)が良貨(真実含有度の高い情報)を駆逐する。この 過程は果てしなく続いている。何故かというと、情報メディアに記者クラブなどの構造的な歪みがあり、これが是正されないからだ。

1つ確実に言えるのは、情報の真実含有度を薄めることでより多くの広告を集めることができるという事実である。広告主は真 実に対しお金(広告料)を払うのではない。広告掲載で生まれる広告効果にお金を払うのだ。結果として良貨(真実含有度の高い情報)を悪貨(真実含有度の低 い情報)と交換することが、情報差額分の広告収入を生むのだ。両替商が金含有量の高い金貨と低い金貨を交換し、裁定取引をするようにメディア も真実含有度の高い情報を低い情報と交換することで広告収入をえるという裁定取引をやっていると考える。

メディアが扱ってる情報の質が悪いという指摘はネット上に無数にあり、私の意見もそうした意見の1つに過ぎない。ただ、グレシャムの法則+裁定取引で説明することで、より簡潔な説明を試みただけだ。

裁定取引が成り立つには市場が未成熟である、不自然な規制があるなどの市場の歪みを必要とする。そして日本メディアには恒常的かつ構造的な歪みがある。つまり真実含有度の低い情報が流通するのに必要な「風土」がある。実はこの部分を一番、言いたかったのだが。

追記

同時に何が真実なのかも一般人には判断できなくなってきた。私が子供の頃は平行宇宙という概念はSFのなかでしか存在しなかった。

また日本の財政危機/国家破産なるものも、国が通貨独占発行権を持っていることをどう解釈するかで、感じる危機度が随分違うだろう。そういう意味では情報の真実含有度が低下するのは時代にあってるのかも知れない。

大体、今の世界において金により裏付けられた通貨などどこにも無い。何故、無いかというとIMFが通貨を金で裏付けることを禁止しているからだ。

では日本のTVと新聞に「発表物」をのぞき真実がほとんど含まれてないのは中国他が禁止しているからか?これは現時点では不明だ。