確率論と言葉のハイパーインフレ
2011.09.14

世の中には嘘を言ってもかまわない分野があるそうだ。1つは政策金利であり、もう1つは為替介入である。政策金利に関しては日本だけでなく欧米も果てしなくゼロに近づいており、もはや嘘を言う余裕すらないというのが現状だろう。

他 方で為替介入はまだ発展の余地がある。中央銀行総裁が記者団に対し「通貨市場に介入することは現時点で全く想定していない」と言った6時間後に大規模介入 をやると、かえって市場から評価される。何故なら、市場にサプライズを与えるからだ。サプライズを与えることで介入効果が大きくなるからだ。

今日、面白い記事を読んだ。

引用

http://sankei.jp.msn.com/region/news/110914/osk11091413030010-n1.htm

“2万%否定”橋下知事の友人「出馬、今は3万%ない」
2011.9.14 12:19

11 月27日投開票の大阪市長選との同日選が想定される大阪府知事選で、橋下徹知事率いる地域政党「大阪維新の会」の候補に浮上した橋下知事の友人の弁護士で 府立和泉(いずみ)高校の民間人校長、中原徹氏(41)について、橋下知事は14日、「友人を知事候補なんかにしたら、府民の維新に対する熱は冷める」と 述べて擁立を否定し、「僕が思っている候補者は僕しか知らない。この人で決定となるまで、執行部はもちろん、周りに出さないようにしている」と述べた。

  一方、中原氏は14日、「校長という仕事に魅力を感じている。(立候補は)今は3万パーセントない」と述べた。維新の教育基本条例案については「選挙民の 声を教育に反映させようという大きな方向性は賛成」と評価。大阪都構想については「まだ勉強不足」と述べて評価を避けた。

引用終わり

こ こで確率論を持ち出すのは野暮である。出馬の意思があるから2-3万パーセントという表現を用いているのだ。もし、全く考えてないなら「馬鹿らしい」とコ メントすれば良い。つまり2万パーセント出馬は無い=20%程度は出馬もありうると解釈すべきだろう。それが3万パ−セントになったということは実質的な 出馬確立が1.5倍に上がったことを意味する。つまり、過去との比較で中原氏が出馬をより現実的に考えていることを意味する。

数学的確率 論と政治的確率論の違いは、政治家の「絶対、無い」は過去の例から見て10%前後の確立の含みがある点だろう。つまり、中原徹氏の発言は政治家としては別 におかしくない。だが、この表現を聞いたTV視聴者、記事で読んだ新聞読者が何ら違和感を持たないとしたら、それはそれで別の大きな問題がある。算数レベ ルの論理思考が出来ない人がいることになるからだ。

政治は友愛だ、魂だ、熱情だ、そうした主張は大いに結構だが、自分の支持者は算数もできない馬鹿ばかりだと言外に示す人は賢いとは言えない。それは表現の機微とか言霊以前の問題だと私は考えるのだ。しかし現時点で、この表現はおかしいと騒いでいるのが私だけなのも事実だ。

政 治家の言葉は昔からインフレ傾向にあった。それは世界的な現象だった。だが、2009年あたりを境に日本は言葉のハイパーインフレ時代に入ったようだ。ぜ ひ、次回の日銀会合で、「インフレ率」を発表してもらいたいと思う。意外と日本のジンバブエ化が進んでいるのかも知れない。