著作権を制限すべき理由
2011.12.24

引用

日 本音楽著作権協会(JASRAC)は22日、著作権使用料を支払わずに、同協会が管理するエルビス・プレスリーなどの曲をバンドで生演奏して営業している として、京都・祇園のライブハウスに対し、演奏禁止や同店が所有する楽器の使用差し止めの仮処分を京都地裁に申し立て、認められたと発表した。同地裁は同 日、使用差し止めの仮処分を執行、ギターやドラムなどの楽器約20点を使用禁止にした。

同協会によると、記録が残る1996年度以降、音 楽作品の著作権侵害を巡り、機材などの使用を差し止める仮処分の執行は、生演奏形態の店は実態が把握しにくいこともあり、全国で21件(うち近畿地方は6 件)にとどまっている。一方、スナックなどのカラオケ使用店は540件に上る。

仮処分決定書などでは、同店は2003年の開業以来、専属バンドが50〜60年代のロカビリーを演奏。同協会は使用料の支払いを求めたが、同店は拒否を続け、昨年11月に仮処分を申し立てた。損害額は同10月までで約1500万円という。

同協会が著作権を管理する楽曲を営業に使う場合、同協会に届け出て利用許諾契約を結び、使用料を支払う必要がある。

http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20111223-OYO1T00170.htm?from=main2

引用終わり

上の記事に何ら法的な問題は無い。だが音楽における創造性に関しては全く考慮されていない。ここで私は10年以上前に報道された、ある事件を思い出すのだ。

英国にSound On Soundという音楽制作技術系雑誌がある。昔、私はこの雑誌を定期購読していた。その時にある記事を読んだ。

ア メリカにおいて「ある訴訟」がおこされた。その訴訟は音楽著作権に関するものだった。あるアメリカ人が、西洋音楽の枠組みのなかで可能なメロディーを全て 生み出すアルゴリズムを考案した。彼はこのアルゴリズムにより、以降全ての音楽著作権を自分のものにしようとした。だが裁判所は(理由は不明だが)このア ルゴリズムを法的に認めなかった。

西洋音楽は基本的に平均律に基づいている。さらにメロディーは64分音符以上の複雑さで演奏されること は無い。これは事実だ。従って、何らかのコンピューター・アルゴリズムにより西洋音楽の枠組みのなかで演奏しうる全てのメロディーを「事前予測」し登録す ることは可能だ。このアメリカ人男性は、実際に全てのメロディーを著作権登録しようとした。ここまでは事実である。

あなたはメロディーを 演奏せずにアドリブだけをすれば良いと思うかも知れない。だがジャズでのアドリブはバックで鳴っているコードとそのテンション音を分散和音の形で提示して いるだけだ。従って、上記のアルゴリズムが法的に認められれば全てのアドリブもまた著作権登録済みとなる。

この裁判は相当に「難しい裁判」だったらしい。ほとんど報道されなかったからだ。幾つか指摘しなければいけない。

1.西洋音楽の枠組みのなかで演奏可能なメロディーやアドリブ・ソロは実際に有限である

2.何らかのアルゴリズムを使えば演奏可能な全てのメロディーを著作権登録できる

3.だが現実においては司法が介入し、そうしたアルゴリズムの発効を防いだ

司法が介入してくれたお陰で私も現在、自分の曲を発表できる。だが、理屈で見るとアメリカ人男性の主張は完璧に正しい。つまり司法の介入は論理的ではない。

すでに書いたように、この裁判自体がほとんど知られていない。私もどういう法的な根拠で「アルゴリズム」が否定されたのかは知らない。

だが音楽の創造性という点から見ると「アルゴリズム」が排除されて良かったと思う。

ここで最初のジャスラックの行為に戻るのだが、彼らの行動は音楽の創造性への配慮が全く無い。音楽文化をジャスラックのような「低いレベル」で議論して良いのだろうか?むしろ、音楽を創造的に保つために音楽著作権を「解放」することが必要だと私は考えるのだが。