橋下徹氏の矛盾した言動
2012.01.29

橋下徹氏は反知性主義と言われる。実際には特定の学者を厳しく批判しているだけなのだが、そういう風にプレゼンされている。誰がプレゼンをやっているか?新聞やTV、つまりメディアである。

ここでは

学者=学術論文を書くことを主目的とする人々

と規定する。

そう考えると、そもそも庶民が学者の意見を知っている訳がない。例えば財政問題だ。

大 阪府の庶民でIMFやBISのサイトにアクセスして、日々更新される「セミ論文」(疑似論文)を読んでいる人がどれだけいるかというと、ほぼいない。私は 大阪府在住ではないがそうした疑似論文を読んでいる。私は生活水準で見る限り、十分に庶民、それも下層に属する訳だが、私は庶民として扱われない。

誰がそう決めているか?新聞やTVである。新聞社の論説委員より英語ができてIMFの疑似論文が苦もなく読める人間は「ニート」であり、本人の性格が腐っているから庶民に入れられないと規定するのだ。

で は大阪府住民が考える経済系の学者は誰だろう?私見を言えば、東大教授である伊藤元重氏や伊藤敏隆氏だろう。実際に、この二人が読売新聞1面で署名記事を 書いているのを私は何回も見た。つまり誰が「橋下が敵視する学者」であるかを庶民に植え付けているのは新聞やTVである。

他方で橋下徹氏は人気TV番組「行列のできる法律相談」で知名度を上げた:

引用

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%8B%E4%B8%8B%E5%BE%B9

マ スメディアへの進出 [編集]大阪で弁護士活動をしている中、高校時代の先輩からMBSラジオのラジオ番組に代理出演を依頼され出演。偶然その時の放送を聞いていた朝日放送の プロデューサーから出演依頼を受け、朝日放送『ワイドABCDE〜す』にジャーナリストの大谷昭宏と共に出演するようになる。大谷とはその後『スーパー モーニング』や『ムーブ!』でも共演している。同番組の火曜日に出演していたデーブ・スペクターが橋下の存在を知り、橋下が出演した放送のテープを東京に 送ったことから在京キー局各社に名前が知られるようになった。

2003年4月から、久保田紀昭の後任として日本テレビ系全国ネットの『行 列のできる法律相談所』にレギュラー出演するようになる。同年7月には関西ローカルの『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ)でもレギュラーと なり、これらの番組におけるユニークな言動で全国的に知名度が上がっていった。大阪に事務所があり、番組出演の前後に公判を入れることがあるため、出演す るのは関西ローカルの番組が多かった。

しばしばタレント・文化人批判や下ネタ発言をする一方、ワイドショーなどでは事故・事件・時事問題について自分の意見を強く述べていた。また、司法問題や法曹界全般、弁護士・裁判官の資質に至るまで幅広く批判していた。このため自身の発言で物議を醸すことも多かった。

引用終わり

つまり現在の橋下氏があるのはTVのお陰だ。その橋下氏が庶民が考える学者は「新聞やTVでの露出が多い人であり、論文引用率が高い人ではない」ことを理解できないはずがない。

つまり橋下氏は「新聞やTVに出る学者=全ての学者の典型」というステレオタイプ化を行い、学者差別攻撃をしているのだ。だが私の考えでは、新聞やTVに出る学者は「彼らがプッシュしたい見解を持つ物知り芸者」でしかない。

私 自身、朝日新聞名古屋本社広告局にいた時に多数の講演会を手がけた。私は地域に関係なく「興味深い意見」を述べてる人を講師として採用しようとしたが、そ の度に「名古屋大学か南山にしとけ、交通費が浮く」という上司の反対にあった。つまり新聞社の選定する講師なるものは「交通費が浮く」程度の理由で決めら れているのだ。正確には「地元密着の重要性」が強調された。

橋下氏は、庶民が考える学者像を誰が作っているかを考えるべきだ。それはどう 見ても新聞やTVである。なら橋下氏は、学者全般を批判する前にそうした「疑似学者」あるいはTV芸者を選ぶメディアを批判するべきだ。ところが橋下氏は メディア批判をしない、特にTVを批判したことが無い(私は知らないという意味)。

つまり優先順位が違うのだ。アカデミズム批判や反知性主義は別に構わないのだが、誰が学者を規定し誰が「学者としての影響力」を規定しているのかを考えるべきだ。それは、どう考えても新聞やTVだ。

そうであるなら橋下徹氏が最初に攻撃する対象はメディア、特にTVであるはずだ。ここに橋下氏の言動における最大の矛盾が現れている。