山陽新聞社、高裁判決を考える
2012.0704

引用

http://www.mynewsjapan.com/reports/1516

山陽新聞偽装部数、広島高裁も「押し紙」認定 ユニクロ、ヨーカドーのチラシ廃棄の告発映像も    

黒薮哲哉  23:49 11/09 2011  
 
トラックで運ばれる山陽新聞の「押し紙」と、水増し疑惑がある折込チラシ。(告発映像より筆者作成)
 
 山陽新聞の「押し紙」と折込詐欺を示す動画群が9月からネット上で公開され、話題を呼んでいる。これらの動画は、ビデオジャーナリズムが新聞社のビジネス モデルの闇を暴いたといえる。

配達されない大量の新聞と折込チラシがトラックに載せられ、古紙回収業者へと運ばれていく様子が映し出され、イトーヨーカ ドー、ユニクロなど名だたる大企業のチラシが破棄される様子も収録。広島高裁は、こうした動画の根拠を裏付けるかのように、去る10月28日、山陽新聞の 「押し紙」を認定した。しかし日本新聞協会は沈黙を守り続けている。みずから山陽新聞の「押し紙」問題を取材してきた黒薮哲哉氏が、これら動画群を検証し た。

引用終わり

上の黒藪氏の記事は優れた記事なので、あまり付け加えることはない。まずオリコミ部数が山陽新聞社の印刷部数より多い。さらに裏付ける動画がある。これでは最高裁の判断が変わることは無いと思われる。そういう意味では画期的な判決であり、重要な判例となるのだろう。

朝日新聞名古屋本社で広告営業を10年やった経験から、幾つかの指摘をしたいと思う。

ま ずオリコミ広告が新聞社により嫌われていた時代があった。それは新聞本紙の地域版広告とオリコミ広告が競合するうえに、オリコミ広告の審査基準が非常に緩 いために、勘違いをした読者から朝日新聞広告局に対し苦情が多くよせられたからだ。広告局にしてみれば売り上げにならないのに苦情だけはくるという困った 広告だった。

だがオリコミ広告が入ると新聞販売店が潤う。新聞専売店網を維持するためには莫大な費用がかかるのだ。そうした販売店網維持の点から見るとオリコミ広告は望ましいために、最終的には新聞社が取り込むことになった。新聞社系列の多くのオリコミ広告社が作られた。

新 聞販売店というと何かわびしいイメージが今はある。だが1980年代の専売店の多くは大変、儲かっていた。色んな豪遊話を聞いた。販売店グループ全員でハ ワイに行ったという話は普通に聞いた。当時、専売店が儲かった最大の理由がオリコミチラシ収入だった。販売局が重要視するのも当然と言える。

朝 日新聞系列の朝日広告社から**さんというかたが出向され朝日サービスというオリコミ広告会社が設立された。この会社が名古屋における朝日新聞社系列のオ リコミ広告を扱うことになった。朝日サービスは広告局とも取引があった。だが広告局と一切、取引しないオリコミ広告代理店も無数にあった。

朝日サービスは販売と広告局両方に顔を出すという珍しい広告会社だった。オリコミ広告は純粋に販売局の仕事だった。今なら下の2社に相当すると思われる。

http://www.asaori-sapporo.com/ (朝日サービス札幌)
http://www.asahi-o.co.jp/company3.html(朝日オリコミ名古屋)

で は何故、広告がオリコミ広告を扱わなかったのか?当時(1980-90)は事情が良くわからなかった。販売局が、押し紙の実態あるいは「正確な部数」が販売外部に もれるのを嫌がったと思われる。実際、「正確な部数」は販売局販売店担当員にも自分の担当エリア以外はわからないようにするという秘密主義が取 られていた。

上のマイニュースジャパンで何故、新聞協会が山陽新聞社の事件に対応しないのか疑問が出されている。当然だろう、ここまで明確な証拠がある裁判が最高裁にいったから覆るとはとても思えない。

マイニュースジャパンのサイトではユニクロなど企業名が確認できるチラシが廃棄されている。だが民間企業は新聞社(あるいは新聞+TV)を敵にまわしてまで損害賠償を求めないだろう。新聞やTVの力はそれだけ大きい。

だが、政府や地方自治体のオリコミ・チラシの場合、新聞社系列のオリコミ広告代理店に支払われたオリコミ広告料金の原資は税金だ。これは大変、大きな問題だ。

税金の無駄遣いが証明されたというレベルではなく、刑法の詐欺罪あるいは公金横領が成立すると思われるからだ。

特 に、今は選挙公報をオリコミとして入れることが多い。これが捨てられてきたのは選挙妨害ではないのか?選挙ポスターに対し落書きをするだけで選挙妨害にな る。選挙期間中に、有権者に投票を告知するための広告/公告オリコミチラシが捨てられたのが選挙妨害にならない理由が考えられない。

選挙公報でどれだけ投票率が上がるかと言えば私も懐疑的だが、政党あるいは候補者によっては投票率が低いほうが有利な場合もあるのだ。これを検証しだしたら大変なことになる。

新聞社/系列広告代理店が選挙妨害をして良いのだろうか?

と ころで、日本ABC協会というメディアと広告業界からの出向者で成り立っている団体がある。我々、広告営業はこのABC協会発表部数を使用した。何故なら (対外的には)ABC協会は新聞販売店に対し抜き打ち調査をすることで部数の正確さを確認していることになっているからだ。

残 念な話だが、この抜き打ち調査が行われる新聞販売店はどこか該当新聞社に「事前通知」があるために、その日だけ「部数合わせ」をするらしい。らしいと書 いてるのはハッキリと明示する社内文書を見たことがないからだ。だが、上司から上記内部情報を何回か聴いたのも事実だ。誰から聴いたかも覚えている 名前は出さない。

この問題は正面から取り上げるなら日本メディアのありかた、および広告業界を根本から変える大問題だ。取りあえず広島高裁の判決が出た。納税者は山陽新聞社を検察あるいは警察に告発することができるようになった。

だが今の民主党与党の状況で検察が動くか?これは不明だ。