平成の大政翼賛会

パート12  誰がボラティリティーを売っているのか?

昔、ブルームバーグ英語版オピニオンを担当していたアンディー・ムカジー氏が2007年頃、下のように書いていた。

「ゴールドマン・サックスやクレディ・スイスのような投資銀行はずっとボラティリティーを売ってきた。それが彼らの安定した基本収益だった」

残念ながら記事は検索しても出てこなかった。だがムカジー氏は現在はシンガポール在住でリンクトインのページも存在する。

http://sg.linkedin.com/in/andymukherjee

Andy MUKHERJEE
Location      Singapore
Industry        Writing and Editing

記事の引用はできないが、上に書いたことは金融業界の常識であるのも確かだ。他のボラティリティーの売り手にはウォーレン・バフェットがいる。

引用

http://blogos.com/article/13448/

バフェットは同モデル(ブラック・ショールズ・モデル)には欠陥があると主張する。期間が数ヶ月単位のオプションなら同モデルは有効だが、バフェットが手がけている期間の長い保険(オプション)契約では、合理的な評価にならないという。

(日経ヴェリタス2011年4月10日56面バフェットからの手紙)

引用終わり

ア ンディー・ムカジー氏は「ボラティリティーを売る」という表現で何を意味しているのか?具体的にはオプション市場におけるオプションの売り、特にプットの 売りである。

プットを買う人は誰か?機関投資家を中心にした現物株保有者だろう。プットを買うことで暴落時の保険になるからだ。従って、コール(上がる方 の保険)よりプット(下がる方の保険)の需要のほうが大きい。結果として価格が高い。価格が高いということは、うまくすれば大きな利益が上がる。

つまり

プットの買い手: 機関投資家ほか
プットの売り手: 旧投資銀行/バフェット

となる。ところがプットの売りは潜在的に大きな危険を含んでいる。

1.地震、台風などの天災
2.政争/クーデター
3.原発事故などの突発事故
4.商品の場合は干ばつによる暴騰、豊作による暴落

こうした場合、LTCMと同じようにゴールドマン・サックスやクレディ・スイスも倒産するはずだ。だが現実にはしない。それは彼らがネットワークを持っているからだ。

具体的には、政治家、官僚、中央銀行、新聞やTVだ。

例えば、大きな事故がおきて自分たちのプット売りが損害をもたらしそうな時、彼らは以下の行動を取ると私は考える:

1.学者や専門家を使い、事故が大きな被害をもたらさないと強調する
2.新聞やTVを使い、民衆を特定方向に誘導する
3.官僚や政治家を使い、話題が出ないようにする
4.中央銀行総裁に発言させる
5.政府に働きかけ、国民の税金で損失を補填させる

こうした旧投資銀行の(オプション取引を含む)自己勘定取引がデタラメであったためにアメリカでボルカー・ルールが提唱された。

引用

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E
3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB
%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%BC#.E3.83.9C.E3.83.AB.E3.82.A
B.E3.83.BC.E3.83.BB.E3.83.AB.E3.83.BC.E3.83.AB

ボルカー・ルール

2010 年1月21日、オバマ大統領は自らが「ボルカー・ルール(英語版)」と呼ぶ銀行規制案を提案した。名称はボルカーによる積極的な銀行規制論に因む。発表の 場には大統領と共にボルカーが現れた。このルールは商業銀行に対してヘッジファンド及び未上場企業への投資やそれらの所有を禁ずるもので、自己勘定取引に ついても制限を加えている。

2010年2月24日、ウォールストリート・ジャーナル紙上に超党派の元財務長官5人の連名でボルカー・ルー ル(英語版)支持の声明が発表された。連名には、マイケル・ブルーメンソール、ニコラス・ブレイディ、ポール・オニール、ジョージ・シュルツ、ジョン・ス ノーの名が連なっていた。

2010年3月6日、ドイツでの講演で、商業銀行の自己勘定取引を制限するボルカー・ルール(英語版)の導入に よって高リスク取引を規制し、商業銀行のヘッジファンド化を避ける事でデリバティブ市場の透明性を確保する必要があると発言した。取引相手がそのリスク負 担を十分把握できない状態でリスクの再配分が行われる事が、世界金融危機_(2007年-)の際にアイスランドやギリシャのシステミック・リスクを招いた ことへの反省を念頭に置いたもの。

2012年2月22日にフィナンシャル・タイムズ紙に、日本の安住淳財務相と英国のジョージ・オズボー ン(英語版)財務相が連名で、外国銀行の流動性が損なわれること、国債発行が難しくなることへの懸念を表明した。ボルカーは3月14日にワシントンであら ためてボルカー・ルール(英語版)の2012年7月導入を訴えた。同日、英国財務省は3月21日にオズボーン財務相が戦時国債(英語版)以来の永久国債発 行検討を正式に発表する情報を公開していた。

(永久国債とは償還期限の無い政府債務だ。政府債務の支払い無限延期である)

参考

http://www.bwfa.com/articles/245

Let's take a look at some of the proposals floating around Washington, DC, these days to reduce market volatility.

· Limit "blackbox" high-frequency computer trading―Computer trading systems using complex algorithms were heavily involved in the infamous "Flash Crash" on May 6, 2010, when the Dow Jones Industrial Average dropped 900 points in less than 30 minutes. Computer trading does push the stock market around, sometimes in damaging ways. Yet, these firms provide a valuable service to all buyers and sellers of stocks by providing liquidity. In other words, they buy whenever we want to sell, so we can always sell stocks quickly.

· Limit short selling―Short selling is selling a stock now with the hope of buying it later at a lower price. Thus, the investor makes money when a stock goes down in value. Many experts claim short selling can push down stock prices further than necessary, thus increasing volatility on the downside. It's probably true, but short-sellers provide crucial discipline on stocks, too. In addition, why should we restrict an investor's profit if that investor believes that a stock or the stock market is overvalued?

· Prohibit investment banks from trading for their own account―Paul Volcker, chairman of the Federal Reserve from 1979 to 1987, is an advocate of limiting investment banks' ability to trade for their own accounts. Investment banks provide market liquidity, and they help big companies raise money to build their businesses. However, the biggest investment banks, such as Goldman Sachs and JP Morgan Chase, make most of their money by buying and selling securities solely to make money. Since these big banks are in the middle of the action, they appear to have an advantage over regular investors and can make money whether the markets go up or down. They also make more money when the markets are more volatile, which gives them an incentive to cause excessive volatility.

引用終わり

日本の安住大臣はわざわざフィナンシャル・タイムズに連名でボルカー・ルールへの反対を表明している。これは奇妙だ。何故なら日本には投資銀行と呼べるものが存在しないからだ。強いて言えば野村か?

ということは安住財務大臣、財務省、あるいは民主党はゴールドマン・サックスやクレディ・スイスのような「国際金融資本」の代弁者なのだろう。

特に英国財務省と連携している点が注目される。

そう考えると2009年8月衆議院選挙までの新聞やTVの異様な報道も理解できる。私は以下のように理解している:

1.2007年のサブプライム・バブル破裂後、日本で資金調達をしてきた国際金融勢力は自分たちの代弁者を日本の与党にすることにした

2.何故なら、日本での調達金利が上がることは死活問題だからだ

3.消費税増税の目的も消費を冷やすことにある

4.消費が冷えると、内需系企業の資金需要が減る

5.国内勢の資金需要が減るのだから海外勢の調達金利は上がらない

6.白川日銀の政策を支持・維持する(デフレ放置)

この一連のシリーズで平成の大政翼賛会は

(政治家+官僚+新聞・TV+国際金融資本)の複合体

と定義した。彼らの目的は何か?日本の内需回復をさまたげ、非常に安い金利で資金を調達し海外で使用することだと私は考える。

重要な事実として、サブプライム危機以降、欧米の信用市場は機能していないのだ。