洗濯屋ケンちゃんを社内で見る
2012.10.03

新 聞社では日曜日も仕事をしている。編集局(≒記者)は月曜日の記事を書き、紙面を組む仕事がある。広告の場合、あまりすることが無い。何故かというと広告 主や広告代理店が日曜日は不在だからだ。もちろん、日曜日でも誰に声をかけるかくらいは決めている。総務とかは日曜日、休みだ。出てきてもすることが無い からだ。

広告は紙面の半分を埋めている。その責任上、ローテーションで日曜出勤をする。希に突発事故がおき、編集局から「記事の分量を増 やすから広告を1面外せ」という要求がくる。来ても、広告主が同意する訳が無いのだが、誰かが広告局を代表して「私が広告主の同意なく広告を外すことを許 可しました」と文書を書く。そして左遷される。

1980年代後半の日曜出勤のことだった。何ら突発事故は起きず、社内は平和だった。私は用意してきた「トムとジェリー」のビデオを会社のビデオ再生機に入れた。半分ほど見た時に職場に誰か入ってきた。その人は私より10年ほど先輩にあたる広告局の役職者だった。

この人は不機嫌な顔で「ビデオ・デッキを空けろ」と言った。不審に思いながら、私は「トムとジェリー」のビデオを取り出した。その人がビデオ・デッキに差し込み再生を始めたのは洗濯屋ケンちゃんだった。これは非常に有名な裏ビデオだ。

その時、広告職場に数名いた。強いて言えば、私がその日の責任者だった。

ビデオの内容は、それはそれで「大変に興味深い人のありかた」の描写だった。だが、私は大して興味を持たず、他の人は高齢者だったので「描写」にのめりこむ者はいなかった。

洗濯屋ケンちゃんが意外にも受けなかった。この広告局の先輩は、ビデオをしまい、そそくさと広告のフロアから出て行った。この人は何の目的で日曜番でも無いのに職場に出てきたのか?どうも洗濯屋ケンちゃんが馬鹿受けすると考えたようだ。

私は無言で「トムとジェリー」のビデオを差し込み、途中から再生を開始した。私はハンナ&バーブラのファンである。ディズニーは嫌いだ。

「もうワシらの歳だと、こっちのほうが良い」という意外な応援の声が出た。

私は広告局の大きな窓ガラスから外を見た。そこは名古屋市の中心街の一角なのだが、まさか朝日新聞の社内で洗濯屋ケンちゃん鑑賞会が今、開かれたと彼らは知ってるだろうか?私は通行人が歩く様を見ながらボンヤリと考えたのだった。

追記

「そうよ、パン屋を再襲撃するのよ」と彼女は言った。何故、再襲撃しなければいけないのか理解できなかった。だが彼女が主張するように呪いを解かなければいけないことに私は無言で同意した。

その時、女将が歳に似合わぬ若やいだ声で「はんなりとな」と言った。その言葉の意味は不明だった。暖簾をくぐり外に出ると驟雨が降りしきっていた。

「やれやれ、こんな天気でパン屋再襲撃ができるのか?」と私は独り言ちた。雨の日は家でチャーリー・パーカーを聴くのが私の習慣なのだ。

ふと思いつきTVをつけた。アナウンサーは東京と大阪が開戦したと無表情に語っていた。そんな馬鹿なと思った私は、公共放送に変えた。すると「東京に現在、砲撃を加えているのは名古屋軍であり、家康の残党と推測されます」とテロップが流されていた。

なら大阪軍を指揮しているのは秀吉の残党なのだろうか?これは東海道戦争か?

(意味不明な文章は気にしないでください)

(意味不明な文章ですが気にしないでください)